Négation 【1】




「これはこれは小さな探偵君」
「“小さな”は余計だ!」
 からかうように余裕をもって声を掛けてくる怪盗に、コナンは、知ってるくせに、とつい頭に血が昇る。
「中身はともかく、外見はどうしたって、小さな小学生で間違いないでしょう?」
「五月蠅ぇっ! そんなことより盗んだ物をさっさと返しやがれ!!」
 言いながら、コナンは時計型麻酔銃の焦点をKIDに合わせた。しかし場所が問題だ。屋上は屋上でも、KIDがいるのはその屋上の細いフェンスの上。よくそんなところでバランスを崩すこともなく立っていられるものだと思うが、その一方、麻酔銃を使うにしても、ベルトに仕込んであるサッカーボールを使うにしても、相手のいる場所が悪すぎる。バランスを崩して内側に落ちるならこれ幸いだが、もし外側に落ちるようなら、どうなるか分からない。当たれば、ヘタをすれば墜落死、当たらなければ逃げられる。コナンはどうしたものかと考えるが、なかなか上手い手が見つからない。
「KIDキラーなどと呼ばれていい気になっているのかもしれませんが、今はもう貴方のような小さな子供が、保護者もなく一人で出歩いていいような時間じゃありません。早々に家にお帰りなさい」
「子供扱いするんじゃねぇって言ってんだろがっ!」
「そうやってむきになるところが子供だと言うのですよ。では、今宵はこれで失礼を」
 そう言ってKIDは体を後ろに倒し、フェンスから落ちた。
 慌ててコナンがフェンスに駆け寄って下を見れば、ちょうどハンググライダーが開いたところだった。
「畜生、あんの野郎、とことん人を子供扱いしやがって」
 そう言って去っていくKIDを見ていたコナンは、まさかそのKIDが携帯で中森警部に子供── コナン── の保護を依頼する電話をしているなどとは思いもよらずにいた。
 コナンはビルを出たところで、丁度中森警部の命令でやってきた警察官に保護され、中森警部の元に連れていかれた。
 そこで中森警部から懇々とお説教をされ、毛利家に連れていかれ、毛利家では小五郎が中森警部から保護者責任を問われた。
 結果、コナンは小五郎と蘭からもお説教を受け、その後、特にKIDの予告状が出た時などは厳重に見張られて、抜け出すことも困難になっていった。
「畜生っ! KIDの奴、覚えてやがれ、元の体を取り戻したらどんなことをしてもとっ捕まえてやる!」
 翌日、学校の帰りに寄った阿笠博士の家でコナンは叫んでいた。
 阿笠は困ったもんじゃ、と呆れ顔で、そして哀は冷めた目で叫ぶコナンを黙って見つめていた。





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