La dernière scène 【5】




「つまり貴方にとってあの組織は、単に宝石を巡って敵対しているというだけではなく、父親の仇、というわけね」
「ええ。ですが先にも言ったように、私一人でやるにはあまりにも大き過ぎる相手ですので」
「それで私たちICPOと手を組む。つまりは、司法取引、ということでいいのかしら?」
「組織に対する制裁は司直の手に任せます。私はそれを見届けることができればそれでいい。
 元々、パンドラを組織より先に探し出して、粉々に壊してやることができればそれで良かったんです。
 けれどそれで済ますには、あの組織はあまりにも大きい。やっていることも非道なことが多過ぎる。だからどうせなら、組織そのものを壊してやりたくなったんです。それで白馬氏に接触したんですよ」
 それから二人は今後のことを相談しはじめた。
 何しろどちらも組織を完全に把握しきれていないのが一番のネックとなっている。とりあえずは今までどおり、蜥蜴の尻尾のような下っ端の組織を潰しつつ、情報を集めて組織の全容を明らかにすることで一致した。
「先の長い話になりそうね。少しでも早く組織の全容を解明しないと」
「『急いては事を仕損じる』という言葉もあります。確実に周りから追い詰めていくのが、遠回りでも最終的には近道でしょう」
「そうね。で、Katsuki、貴方自身は何を望むの? 私たちICPOは世界規模の犯罪組織を潰せる。それで貴方は? 組織を潰すだけではないでしょう?」
 司法取引として何を望むのか、とそれをアネットは問い質した。
「私が貴方方に望むことですか? それはいずれまたの機会に」
 そう告げて、Katsukiは微笑みながら立ち上がった。
「新しい情報が手に入ったら、また今までのように連絡します。それでは」
「Katsuki!」
 アネットが立ち上がって名を呼んだ時には、既に彼の気配は綺麗に消えていた。
「……流石、と言うべきところなのかしらね」
 一息吐くと、アネットは再び椅子に腰を降ろした。
「2代目か、考えたことなかったわ。でもそうなると、1412として指名手配した相手とは異なるってことよね」
 テーブルに肘を付け、掌に顎を乗せながら考える。
「ここで私が考え込んでも仕方ないわね。明日上司と相談しますか」





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