パリ市内にある、とある救急病院にアネット達が駆け付けた時には、Katsukiの手術は終わり、彼は集中治療室に運ばれた後だった。
アネットが主治医に容態を尋ねる。
「彼の状態は? 助かりますか?」
手術を担当した医師は残念そうに顔を横に振った。
「出血量が多過ぎます。弾のそれぞれ一ちずつに関して言えば、致命傷になっているものはありませんでした。状態としては掠ったものが二個、貫通したものが二個、中に留まっていたものが三個。一部、内臓に食い込みかけていたものもありました。未だ生きているのが奇跡のような状況です」
「そうですか……」
アネットはそう一言応じた後、去っていく医師に一礼して、また治療室の中のKatsukiの様子に見入った。
「どうする、アネット?」
不意に声を掛けてきた、一緒に病院に来た同僚にアネットは振り向いた。
「どうする、って?」
「彼のことを連絡する相手とか、何か……」
問われて、アネットは考え込んだ。
彼── Katsuki── は自分のことは必要最低限のことしか告げなかった。彼が怪盗1412であることはもちろん分かっているが、その素性までは彼は決して話さなかった。だが考えてみれば彼にも日常の生活があり、家族や友人がいるはずだ。しかし一体どこに連絡を取ればいい。顎に手を当てて考えてみる。
そして不意に思いついた。
「探だわ!」
そもそもKatsukiが自分に連絡を取ってきたのは、白馬探の紹介だと言っていた。
「探っていうと、日本の白馬、か?」
「ええ、そうよ。彼が私に接触してきた切欠は探だって言っていたもの。直ぐに連絡を取ってみるわ」
そう告げて、アネットは急ぎ足で廊下に出ていった。
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