La dernière scène 【10】




 組織の本拠地は、パリ郊外にある化学研究所だった。決して大きくはないが工場も併設しており、調査した結果、毒ガスなどの生産もしているらしい、謂わば“死の商人”といって差し支えないところだった。
 そこに勤めている者の全てが組織に関与しているとは言い難い点があったが、いちいち一人一人チェックしているわけにはいかないということで、その点は後にして、研究所にいる者全てが捕縛対象となった。
 まずは頭数で研究所を取り囲み、取り零しが出ないようにした。その後、時間になったら本隊が一斉に研究所に押し入る手筈になっている。
 研究所の終業時間は現地時間で18時。突入はその1時間前の17時を予定している。
 研究所からある程度離れた森の中に停車させた、今回の仮の総本部となっている改造車輛の中では、リアルタイムで世界中の動きが入ってきている。
 そんな中でアネットは一人、現地フランスの時間が表示されている携帯の画面を見つめていた。各国の実働部隊はグリニッジ標準時間で動くが、その開始時間はこの場の17時だ。その合図をアネットが出すことになっている。
 携帯の表示する時間が17時を示したと同時に、アネットは叫んだ。
「突入開始!」
 それに応えて、各国の現場との遣り取りを担当している者たちが、一斉に各国の言葉で、同じことをそれぞれ担当の相手側に告げる。
「第一部隊、とにかく会長のパトリック・ジャベールの身柄を確保することを最優先して。組織の首魁である彼を捕えることが何よりよ」
 アネットは突入を告げた後、さらに突入部隊に最優先事項を伝えるのを忘れない。
 本部車輛の中が緊張感した空気に覆われていく。
 時間が経つにつれて、次々と幹部や各国での責任者としてリストアップされている人物たちの身柄確保の報が増えてくる。
 30分もした頃には、英国で組織のNo.2と目されていた人物が確保できた旨の連絡も入った。
 しかし組織の本拠地であるここでは、確保の人数だけは増えているものの、肝心のジャベールの身柄確保にはまだ至っていない。
 時折、各国の状況に対して助言を出したりしていたKatsukiが扉に近付いたのにアネットが気付いた。
「Katsuki?」
「ちょっと外の空気を吸ってきます」
「あまり遠くへいかないように。気を付けてね」
「ええ、分かってますよ」
 一歩外へ出れば、澄んだ空気が染み渡るようだった。
 さすがに現場の様子を窺い知ることはできないが、その喧騒は僅かに聞こえてくる。それを確かめて、Katsuki、否、快斗は足を踏み出した。





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