ある日、他のメンバーがいないのを見計らって、リヴァルがミレイに尋ねた。
「今回はカワグチ湖には行かないんですか?」
「行かないわよ。っていうより、行けないわよ。あんな事件が待ってるんですもの。しかもそれがきっかけで、ニーナはユーフェミア様に傾倒した挙句、あんな恐い兵器を創っちゃったのよ。まあ、幸い今回はゼロがまだ現れていないのが救いだけど、これから先どうなるか本当に分からないんだもの。不安要素は少しでも削いでおかなくちゃ」
「まあそれは確かに会長の仰る通りで」
「でも何処にも行かないのもつまんないからぁ、手近なところでハコネでも行こうかなぁー、なんてね」
笑って告げるミレイに、リヴァルは肩を落とした。
「場所が違うだけで出かけるのは同じなんですね」
そう言って、リヴァルはフーッと深い息を吐き出す。
「まあ、バイト頑張って。皆でお土産買ってくるから」
言いながら、ミレイはリヴァルの肩を思い切りよく叩いた。
そしてハコネへの旅行日当日、宿泊先のホテルでテロ組織である日本解放戦線によるカワグチ湖のホテルジャックのニュースが入り、それを見ながら、ルルーシュをはじめとした生徒会のメンバーたちは、カワグチ湖じゃなくて良かったね、と互いに言い合っていた。
カワグチ湖の事件があって暫く経った頃、コーネリア率いるエリア11の軍はナリタを目指していた。ナリタは元日本軍の軍人たちによるテロ組織たる日本解放戦線の本拠地とも言える場所であり、これを攻略できれば大きな戦果となる。
ミレイとリヴァルの逆行した以前の記憶では、これにゼロ率いる黒の騎士団が加わった三つ巴の戦いとなり、関係者以外にも大勢の被害者を出した。その中にはシャーリーの父親もいたのだが、今回はゼロも黒の騎士団も存在せず、被害は互いの軍の中の者のみに限られていたのが幸いか。
しかし全滅こそしなかったものの、日本解放戦線は此処で多くの犠牲を出し、エリア11内の抵抗勢力は明らかに縮小の方向にあった。
そんな中、“厳島の奇跡”の二つ名を持つ藤堂鏡志朗がブリタニアに捕縛され、彼の部下である四聖剣と呼ばれる者たちは、NACとして表ではブリタニアに協力してゲットーを治めているキョウト六家に藤堂奪還のための協力を要請した。キョウトは四聖剣たちに新しいKMFを与え、その機会を用意した。
彼らは知らないことだが、前回においてはゼロと黒の騎士団の協力があっての上でのことであり、今回はそれに頼れない分、幾許かの心もとなさはある。
だが、そもそもそれを知らない以上、彼らは四人だけで藤堂を奪還すべく行動を起こした。
それは奇しくも前回通り、チョウフ基地にて藤堂の処刑が実行される予定の日であり、その一方、トウキョウ租界では、クロヴィス美術館にて絵画コンクールの授与式が副総督ユーフェミアによって行われる日であった。
授与式の前の会見で、ユーフェミアはマスコミの質問攻めに真面に答えを返すことができず、自分の至らなさ加減に恥じ入っていた。
その頃、チョウフ基地では四聖剣が藤堂を奪還すべく基地に乗り込んでいた。そこに待っていたのは、四聖剣の乗るKMFの機体性能を大幅に上回る現行世界唯一の第7世代KMFランスロットだった。
しかし機体の性能では劣っても、その分を経験で補い、また4対1、いや、藤堂が四聖剣が持ってきた機体に乗り込むことに成功したことで5対1となり、ランスロットは数で劣勢に追い込まれた。
その様子が美術館のスクリーンにも映し出される。5機のうちの1機が、ランスロットのコクピット上部を切り裂いていく。そこに現れたデヴァイサーは、イレブンだった。
それが知れたと同時に、それまでランスロットを、名前を知らぬまでも“白騎士”と呼び、応援していたマスコミの者たちをはじめとするその場にいた者たちは一斉に応援を止めた。
それどころか、藤堂を無事に奪還できたことで、これ以上の深入りは無用と逃亡していく5機のKMFを追おうとしないイレブンのデヴァイサーに批難を浴びせる。
そんな中、同じようにその様を見つめていたユーフェミアは手を上げてはっきりと告げた。
「先程の質問にお答えします。私が騎士となる方を決めたか、でしたね。
私が騎士とするのはあそこにいる方、枢木准尉です」
皇族が、それもエリアの副総督たる立場にある者が、己の騎士に名誉となっているとはいえナンバーズを指名したことに、会場内に動揺が走った。ユーフェミアの傍に控えていたダールトンも言葉が無かった。
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