皇女の騎士 【3】 |
「何も言ってはくださらないのですね」 ユーフェミアはスクリーン越しに姉のコーネリアと向かい合っていた。 『騎士の任命は皇族の特権だ。総督といえど口を出すべきことではない』 そう口では言いながらも、スザクを騎士に任命したことを認めていないのはその表情を見れば一目瞭然だ。 「お姉さま」 『総督だ。ナンバーズ制度は国是だということをもう一度頭に叩き込んでおけ。それから、おまえは公私の区別をきっちりつけることを覚えなければならない。公私混同が過ぎる』 そうして結局ユーフェミアは言いたかったことの半分も言えないまま、姉に、否、総督に確認したいと思っていたことも碌にできないままにスクリーンを切ることとなった。 一方、特別派遣嚮導技術部、通称“特派”では、主任のロイドが帝国宰相シュナイゼルからの通信を受けていた。 「へ? 嘘でしょ?」 『嘘ではないよ。枢木スザクは本日付をもって特派を除籍、軍は退役、副総督の選任騎士としてそちらに専念してもらうことになる』 「そんなぁ……。だって、話つけてくれたんじゃなかったんですかぁ?」 ロイドが情けない顔をして力のない声で確認するが、決まったことは変えようがない。 『枢密院からのお達しでね。選任騎士たる者が、どちらが先にせよ、他の皇族にも同時に仕えるのは認められないと』 「枢密院て、あの枢密院ですかぁ?」 『枢密院といえば一つしかないな。猊下がかなりお怒りのようだ』 「えっ、げ、猊下がっ!?」 情けない表情だったロイドが、今度は“猊下”の一言に顔色を変えた。 『宰相だからといって何でもできるわけではない。それに、個人的にも猊下のお怒りは受けたくないしね。コーネリアにも一言あったらしいよ。とにかく議長のシュトライト伯からくれぐれもと言われたことだし、もう決まったことだ。後のことは任せる』 「それって、つまり僕から彼に言えってことですよねぇ」 『当然だろう。特派での彼の直接の上司は君なんだから。学校のこともあわせて頼んだよ』 通信が切れた後、これからのことを考えて、ロイドは力が抜けたように机に懐いたのだった。 |