最後の手紙 【2】




『1つ。エリア11における第2次トウキョウ決戦において、市街地でフレイヤ弾頭を投下し、軍民併せて3,500万余の命を奪ったこと。
 確かに実際に軍の指揮を執っていたのはシュナイゼルだろう。だが、エリア11の総督はおまえであり、たとえ指揮権を移譲していたとしても最終的な責任は総督であったおまえにある。
 フレイヤ弾頭の投下によって一番被害を受けたのは、本来軍から守られるべき民間人、しかもブリタニア人だった。
 2つ。エリア11がフレイヤ弾頭の投下によって混乱のまっただ中にある中、おまえは、自分でしたことではなかったのだろうが、死亡を偽装して行方を晦ませた。
 本来ならば真っ先に陣頭指揮を執り、エリア11の、トウキョウ租界の混乱を終息させねばならないはずの総督がいなくなったことは、混乱に拍車をかけ、それを長引かせただけだ。
 3つ。帝都ペンドラゴンへのフレイヤ弾頭の投下。
 おそらくシュナイゼルから民は避難させたと言われでもしたのだろうが、実際にはそのようなものは出ていない。ペンドラゴンにいた1億余の人々は、何も知らぬまま普段通りの生活を送っていたところを、突然フレイヤ弾頭によって何も分からぬまま一瞬のうちにその命を奪われ、消滅した。
 4つ。エリア11におけるフジ決戦。
 ブリタニア国内の皇位継承争いに過ぎないはずの戦いに、外部勢力である、超合集国連合の持つ黒の騎士団を介在させたこと。
 加えて私に反抗したことで、私が行った、弱肉強食という国是の否定、覇権主義、植民地主義の否定、貴族制の廃止、財閥の解体などに対し、行動でそれに反対を示し、それらすべてを肯定し、シャルル皇帝下の体制への逆行を示したこと。おまえがどれほど口では違うと言っても、行動が全てを肯定している。

 おそらく現在(いま)は悪逆皇帝と謗られた私が死んだことに皆浮かれ、何も見えてはいないだろう。しかし時が経ち、落ち着いてくればおのずと見えてくることばかりだ。
 私が示した4つの事項は、今後のブリタニアの内政にとっても、外交にとっても、足枷にしかならない。つまりおまえが国家の代表になるということは、長い目で見た時、ブリタニアという国にとってはマイナスにしかなりえないのだ。
 ナナリー、私の言っていることが分かるだろうか。
 そして兄として、妹のおまえには国家の代表などという立場ではなく、ただの一人の人間としての平穏な生活を送ってほしくもある。
 これを読み、その後おまえがどう判断するか、全ておまえ次第だ。おまえが懸命な判断をすることを願っている。

 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアよりナナリー・ヴィ・ブリタニアへ。

 最後に、誰よりもお前を愛しているよ』



 手紙を読み終えたナナリーの瞳からは涙が零れていた。
「おに…さま、私は、間違って、いたのですか……?」
 兄が息を引き取る寸前に見えたビジョンから兄の真意を知り、兄の意思を継いでこの国を纏め治めていくのだと思っていた。新しいブリタニアを築いていくのだと。そのつもりでいた。
 誰も何も教えてくれなかった。だがそれは言い訳にはならない。自分で気が付かなければならなかったのに、何も知らなかった、考えてもみなかったし、視力は戻っても結局何も見えてはいなかったのだと、ナナリーは漸く気付いた。





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