La dernière scène




 彼女はテアトル広場で画家たちが観光客の似顔絵を有料で描いているのを見ながら、人を待っていた。
 果たして彼はどのような姿で現れるのか。あちらこちらに目をやりながら、目当ての人物が現れるのを待つ。いや、待つしかない。自分では彼が分からないのだから。彼が自分のことを知っているのは十分過ぎるほどに推測できるが。だから彼からの自分に対する接触を待つしかない。
 時計が約束の時間になったと同時に後ろから声が掛かった。
「Bonjour, Mademoiselle Annette」
 振り返って問い掛ける。そこにいたのは、20歳前後の長身で細身の青年だった。
「……貴方が、1412?」
「Oui」
 ポンと軽い音がして、いつの間にか赤い薔薇の花束がアネットの手にあった。
 それに一瞬目を見張り、彼が現在メインで活動している日本で“月下の奇術師”と呼ばれているだけのことはある、とアネットは改めて思った。
「Katsukiと呼んで下さい、今は」
 それが、この春からメールで遣り取りしていた相手── 怪盗KIDことSecret No.1412── と、ICPOに出向中のフランス警察の刑事アネットの、直接の、そしてはじめての出会いだった。





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