翌日、KIDは変装して宿泊先しているホテルのダイニングルームで朝食を摂りながら、何紙もの新聞を確認しつつ、同時にノートPCからイヤホンを使ってニュースでも確認していた。いずれも、昨日の国際的犯罪組織摘発について取り上げていた。
「思った以上にうまくいったな。っていうより、あっけなさすぎ」
ある意味、想定通りではあったけど、などと思いながら、手にしていた新聞を置いて朝食を摂り続けた。
食事を終えて、食後の、砂糖とミルクたっぷりのコーヒーを飲みながら考える。
「むしろ、問題はこれから、だよなぁ」
そう、問題はこれからだ。今回倒したのはあくまで表の実行部隊に過ぎない。いわば、人形だ。自分たちが人形であることすら知らない人形たち。KIDの本当の目的は、その人形たちを操っていた人形遣い。KIDの真の目的は、その人形遣いたる影の存在、赤の魔女と同等の力を持つと思われる一族。
「本当なら、魔女殿の領分なのでしょうけれど……」
知らず、口調が普段のものからKIDとしてのそれになっている。
「魔女殿の力を借りれば、いささかなりとその戦いが楽になると分っていても、それでもあなたの力を借りるわけにはいかない。何故なら、これは私の私怨なのですから。……知れば、あなたはきっとお怒りになられるでしょうが、それでなくとも、あなたにはすでに宝石の始末をお願いしました。それ以上のことをお願いするのは無理というものです」
コーヒーも飲み終えたKIDは、テーブルの上に散らばった新聞を取り纏め、ノートPCと共に手に取ると、席を立ち、自分の部屋へと戻るべく、ダイニングルームを後にした。
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