神聖ブリタニア帝国の帝都ペンドラゴンにある広大な敷地を有する宮殿の、表門を入った処に、他の官庁舎と異なり、三つだけ、その庁舎を有しているものがある。
一つは、皇帝をはじめとした皇族方の、大雑把にいってしまえばお世話をするための宮内省。今一つは、現在、実質的にこの国を動かしているといって最早差し支えのない、帝国宰相たる第2皇子シュナイゼル・エル・ブリタニアを主とする宰相府。そして最後の一つは、皇帝の諮問機関たる枢密院である。 枢密院には、表の顔と裏の顔がある。表は皇帝直属の諮問機関であるが、皇族や貴族たちの間では、裏の顔である、彼らの監督者としての存在感の方が大きい。枢密院に目を付けられて、今まで無事に済んだ者は一人もいないというのがもっぱらの噂である。
この枢密院、トップは枢機卿という肩書を持ち、皇族が務めるのが慣例となっているが、空位ということもままある。この場合、枢機卿の代理を務めるのは枢密院議長、副議長のいずれかである。もっとも空位でない場合も、枢機卿が直接表に出ることはほとんどなく、誰もその存在を知らないままに終わっているということも過去にはあったらしい。
枢密院は、枢機卿を別にすれば、議長副議長を含めて10名で構成されているが、欠員が出た場合は、残ったメンバーで厳重な審査の上で補充され、枢機卿代理として表に出る議長副議長を別にすれば、当人たち以外は誰が枢密院議員なのか分からないというほどの徹底振りである。
今回枢密院で問題になっているのは、数日前に公表された、第3皇女にしてエリア11副総督であるユーフェミア・リ・ブリタニアの選任騎士についてである。
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