『色々とお詳しいですね』
「こんなことも分かっているよ、シュナイゼル。君たちが打ち込んだフレイヤの着弾予想地点の中心が、このペンドラゴンの中心であったこととかね。今話している間に報告が上がってきた」
『でも! 中心地点の人たちには避難勧告が出されていましたでしょう!』
「ナナリー、君はそんなことを信じているのかい? もしそんな勧告が出ていたら、今頃私はこんな処でのんびり君たちと話をしていたりはしないよ」
『そんなはず……』
「他にもね、君の知らないルルーシュのことを知っているよ。マリアンヌ皇妃が身罷られて皇帝である父上に謁見をした際、「死んでいる、生きていない」と言われたことや、日本に送られた当時、ブリタニアの子供だというだけで、出かければ近所の子供たちからの虐めにあったり、売っているものを買うこともできなかったりね」
『そんなはず、ありません。そんなこと、私は何も聞いていません……』
首を振って涙声でナナリーは答える。
「そうやって君に心配や苦労をかけまいとしながら、君をずっとただ一人で守り育ててきた母を同じくする兄と、死亡したと偽りの報告を出して、隠れてペンドラゴンにフレイヤを投下する異母兄と、君はどちらを信じるんだい? ルルーシュがゼロであることを隠していた、それだけで君たちのこれまでの二人だけの生活を否定するのかい? 1年もの間、記憶を書き換えられ、君のことも母親であるマリアンヌ皇妃のことも忘れさせられ、偽りの弟を監視役として与えられていたルルーシュの人生を、君は否定できるのかい? 君はそれほどの存在なのかい? 「もっと優しい方法で変えていける」、そう言ってゼロを否定した君が、フレイヤの使用を許すのかい?」
『私は……』
「さて、どうするね、シュナイゼル? 君がこの1ヵ月もの間潜伏していたのは、ダモクレスとかいう天空要塞の完成を待っていたからだろう? もしなんだったら、実験用に新たに用意したフレイヤをそちらに向けて発射してもいいんだよ?」
『あなたがこんなに侮れない方だったとは思いもしませんでしたよ』
「何、それがこの皇室で生きていくための処世術さ」
そう告げてオデュッセウスはにっこりと笑った。
「そしてこれが、8年前、あの子に対して何もしてやれなかったことへのせめてもの償いだよ」
結果、シュナイゼルたちはオデュッセウスに対して恭順の意を示し、太平洋上でフレイヤを積んだダモクレスをそのまま破棄破壊すると、シュナイゼルをはじめとする乗員たちは高速艇でペンドラゴンに到着した。
到着後、兵士たちは単にシュナイゼルの命令に従ったのみということで即自由の身となったが、シュナイゼルとその副官のカノン、コーネリア、ナナリーの四人は、拘束されて宮殿に連行されることとなった。
コーネリアにはブラック・リベリオンで混乱するエリア11を放って出奔した罪、ナナリーにはフレイヤ弾頭でトウキョウ租界に大きな破壊を齎し、加えて軍民合わせて3,500万余もの死傷者を出させ、かつ死亡を装いエリア11の総督としての職務を放棄した罪、シュナイゼルはエリア11で当時直接の指揮を取っていたことから、ナナリーと同じくエリア11で引き起こした被害と、宰相としての職務放棄を責められ、謹慎処分となった。
「ナナリー」
謹慎先の離宮へと赴く前に、ナナリーはオデュッセウスに声をかけられた。
「ルルーシュには君が無事であることはまだ伝えていない。私が言ったことをよく考えて答えを出しなさい。その答え次第で、ルルーシュに会わせてあげよう」
「……はい、オデュッセウスお異母兄さま」
ナナリーは足と目のこともあることから、一人では、との配慮の結果、コーネリアと一緒のリ家の離宮に謹慎となった。
『オデュッセウス異母兄上、お変わりありませんか。
私は、リヴァルたちと一緒に再建なったアッシュフォードで学園生活を楽しんでいます。
クロヴィス異母兄上やユフィを殺したこと、その他大勢の人を死なせてしまった罪は変わりませんが、異母兄上が仰られたように、命懸けで俺を救ってくれたロロの想いに報いるためにも、これからはナナリーのためではなく、自分のために生きてみようと思います。
高校を卒業したらジェレミアたちと一緒にそちらに戻ります。異母兄上の傍で、優しい世界を創るためのお手伝いをするために。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアより』
── The End
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