今は昔、宇宙には一匹の長大な竜がおりました。
竜はもうずっと永いこと、宇宙を彷徨っておりました。
宇宙に在るのはただ竜のみで、他には何者もおりませんでした。
竜は、永い彷徨いと、心を交わす者のいない孤独とに、身も心も傷つき、疲れ果てておりました。
そして竜は考えたのです。
いずれは生命尽きる身であれば、残る生命を、力を使ってこの身を大地とすればよい。
そしてそこに子供たちを生み出し、はぐくみ育てればよい。
そうすれば、もう孤独に泣くことはないのだ── と。
そうして、竜はとある太陽の傍らにその身を置いたのです。
やがて竜の身は一つの大きな塊となり、永い時間をかけて、竜の思い描いたように、緑なす大地となりました。
そしてそれから、自分の現身たる子供等を生み出したのです。
竜が翔び、竜が舞う───── 。
時間が流れて───── 。
“竜── !”
鳳凰が、呼びます。
かつての竜のようにただ一人宇宙を彷徨っていた鳳凰が、その羽根を憩めるために降り立った青い惑星、竜の棲む惑星── 。
竜は、初めて自分以外の者と心を交わすことができたのです。
どれほどに子供等を生み出そうとも決して拭いきれなかった淋しさが、鳳凰の訪れに漸く癒されたのです。そしてそれは、鳳凰もまた同じだったのです。
竜の想いと鳳凰の想い、竜の力と鳳凰の力── それらが一つになって、新しい生命が生み出され、大地に満ちてゆきます。
鳳凰の差し延べた手を、竜が取ります。
そこに在るのは、親たる竜の心を受け継いだ竜の子等とその眷属、鳳凰と、鳳凰に仕える者たちと、そして、彼等の子供たる無数の小さな生命たち。
緑なす、生命溢れる大地、それはかつては竜でした。
ここは、竜の星───── 。
── 了
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