櫻の花の咲く頃に




 トルーパーとしての妖邪との戦いの始まりは、春の新宿だった。そして朱天の命を懸けた戦いと、それにより妖邪帝王阿羅醐から解放された、迦雄須一族の末裔たる迦遊羅の力もかりて、その阿羅醐を倒し、人間界にかけられた妖邪界の力を消すことが叶ったのも、春だった、ただし一年後の。
 彼ら自身にはそんなに時間が経ったという感覚はない。だがそれは、妖邪界と人間界とでは時間の流れが異なるが故であり、妖邪界に乗り込んでいた間に、それだけの月日が流れていたということなのだと、咲く櫻の花を見て、皆、漸く実感した。
 ちなみに、その一年の間、彼らは行方不明扱いになっていた。家族の者は具体的なことまでは分からずとも、元が代々家に伝わっていた珠と、それに伴う言い伝えがあり、それが故のことであれば、世間では行方不明ということで色々と言われたりもしていたが、その点は特に心配はしていなかった。表面上、世間体からの体裁はとってはいたが。何より、家族の者にとっては、それ以上に心配なことがあったのだから。妖邪という、人間とは異なる存在との戦いに赴いたということを知っている以上、状況は分からぬまでも、行方不明ということとは別の心配だったのだ。果たして、無事に役目を果たし、妖邪を倒して帰ってきてくれるかと、家族の者たちは、ひたすらそれだけを祈り、願っていた。



 阿羅醐を倒した遼たちトルーパーは、この一年の間、行動を共にし、何かと彼らの世話をしてくれていたナスティの好意に甘え、暫し疲れた体をナスティの山中湖近くの家で休ませていた。
 そしていよいよ明日はナスティの家を出て我が家に帰るという日の夜、彼らは約束をかわした。
 互いのその時その時の状況もあるだろうから、毎年全員で、というのは無理かもしれない。でも、10年後にはきっと皆してまた会おうと。けれど、それまでに、可能な限り連絡は取り合おう。何気ない近況報告だけでもいいから。そしてまた、全員は無理でも会えるようなら会おうと。そうして互いに連絡先を交し合い、翌朝、ナスティの車で駅まで送ってもらい、東京駅までは一緒に出たが、そこで、五人ともに名残惜しげに別れた。それでも、これが最後じゃない。まだ自分たちの人生はこれからで、連絡をとったり、会おうと思えば、いくらでも叶うのだから、と。
 それから程なく、当麻からナスティを含めて五人に葉書が届いた。
 その内容は、「これから暫くアメリカに行ってくる」と簡潔にそれだけだった。
 それを最後に、当麻からの連絡は途絶え、逆に他の者たちから当麻に連絡をつけることもできなかった。



 そして10年の時が流れ、約束の年──
 新宿駅東口、アルタ前に、20代前半と思しき男性4人と、それよりも少し上らしい女性が一人、立っていた。いずれも異なった個性を放ち、また、皆、容貌も整っていた。ことにその中の一人はことさらに。そしてまたそんな男性たちに囲まれた女性もまた、綺麗だった。そんな者たちが立っていれば、人目を惹かぬわけがない。しかし彼らから放たれる空気、あるいは存在感、とでもいうのだろうか、それは圧倒的で、軽く声をかけられるような感じではなく、ただ遠めに見やるだけだ。
「遅いな、あいつ」
「まさか、忘れてる、なんてことないよね」
「アメリカに行くと葉書をよこして以来、ずっと音沙汰なしだからな」
「それとも、あいつのことだから、寝坊でもしてるか」
「とにかく、まだ時間があるから、もう少し待ってみましょう」
 そんな会話を交わしている中、ふと二人の男性が顔を挙げ、駅の方向を見た。
「風が、変わった……?」
「来たか……?」
 二人のその言葉に、残りの三人も同様に駅の方を見た。すると、大勢の人々の中に、珍しい青い髪が見え隠れしている。それを確認して、五人の顔を綻んだ。
「漸くご到着のようだね」
「まあ、あいつが遅れてくるのはいつものことだしな」
「そうだね、忘れずに来たことだけでも褒めてあげよう」
 そんな彼らの遣り取りに、女性が微笑みを浮かべる。

「遅くなってすまん! 日本には昨日のうちについてたんだが、1ヶ所立ち寄りしてたら少し手間取って」
 五人の下に駆け寄ってきた、彼らと同年輩と思われる男性── 当麻── は、まず最初にそう口にした。
「君のことだから、もしかしたらてっきり忘れているかと思ったよ」
「忘れてなくてもおまえが遅いってのは、元々だからな」
「ふふ。それより、間に合ってよかったわ。近くのレストランに、ランチの予約を入れてあるの。早速だけど、移動しましょう」
 女性── ナスティ── の言葉に促されて、彼らはその場を離れた。それらの遣り取りを見ていた周囲の者たちは、彼らがいなくなると殆ど一斉に深い溜息を吐き出した。それがどういった思いからかはそれぞれのようだが。



 ランチに入ったレストランでは、予約していたとはいえ、ちょうど昼時で混雑していたということもあり、誰言うともなく、とにかく話はあとでゆっくりと、といういように、軽い雑談程度で殆ど食事をしただけでその店を後にした。
 これから向かうのは、彼らにとっては懐かしいナスティの柳生邸だ。向かう電車の中、疲れていたのか、食事の直ぐ後ということもあって、当麻は寝入ってしまった。そんな様子に、残りの四人は小声で会話する。
「どうする?」
「まあ、当麻は昔からよく寝てたからねぇ。そういう時は起こすのもかわいそうだし」
「そうだな。それに何より、当麻がこうして眠り込んでいるということは、それだけ安全だという証拠でもある」
「言えてるな、何かあれば、当麻はすぐに起きるから。それこそ俺たちの誰よりも真っ先に」
「それが、智将たる天空ゆえ、なのだろうな」
 微笑(わら)いながら聞いていたナスティだったが、一つだけ釘をさすのは忘れなかった。
「当麻をこのままに、というのはいいけど、降りる駅に着く前には、絶対に起こしてね」
「分かってるよ、ナスティ。その時は頼むね、征士」
「どうして私なのだ、伸?」
「それはもちろん、君が一番、当麻を起こすのに慣れてるから」
 伸の言葉に、征士以外の四人が小さく笑った。
 そうして目的の駅に着く少し前に、征士は伸に言われたとおり、当麻を起こした。少し寝ぼけ気味ではあったが、それでも一人で駐車場まで歩いた。駐車場には、ナスティの車が停められており、彼らはその車に乗り込むと、ナスティの運転で、懐かしい、一時期は我が家とも思えていた柳生邸へと向かう。途中、スーバーで食材などの買い物もしたが、その間、というよりも、車に乗ると、当麻はまた直ぐに寝入ってしまい、皆の笑いを誘っていた。



 最終目的地である柳生邸に到着すると、征士は当麻を起こし、それぞれに荷物をもってナスティに先導されるまま、家の中に入った。
「部屋割りは、昔と同じでいいでしょう? そのつもりで用意していたんだけど」
「それでいいよ、悪いね、ナスティ、今回もまた迷惑かけて」
「あら、迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないわよ。だって、確かに私はトルーパーではないけれど、あの時は、これは私の驕りかもしれないけど、一緒に戦った仲間だと思ってる」
「そんなことないよ! あの時、ナスティにはどれだけ助けられたことか!」
「そうだぜ。戦い方が違っただけで、ナスティは立派に俺たちの仲間だよ」
「ありがとう、皆。じゃ、部屋へ荷物を置いてらっしゃい。あ、それと伸、悪いけど、夕食を作る手伝い、お願いね」
「了解、昔通りにね」
 ナスティに促されるように、皆、かつての自分たちの部屋に向かい、荷物を置くと、再び階下に下りて居間に集まった。その中で伸はナスティの手伝いをするためにキッチンへと向かう。と、当麻も共に立ち上がり、伸と共にナスティの元へ行った。
「どうしたの、当麻。君も料理の手伝いとかするつもり? できるようになったの? 食い気一本だった君が」
「そうじゃない」伸の嫌味を込められたかのような問いかけに簡単に答えると、当麻はナスティに声をかけた。「ナスティ、俺、書斎にいるから」
「分かったわ。前と何も変わってないから。夕食の用意が終わったら声をかけるわ」
「了解」
 ナスティの言葉を受けて、当麻はかつて妖邪の研究のために、ナスティと共によく篭っていた書斎へと脚を向けた。
「智将殿の悪癖か」
 そう呟きながら、伸はナスティの横に立った。
「で、何からすればいい?」



 夕食を終えて、漸くといっていいだろうか、互いの状況などの情報交換の場のようになった。
「で、最初に聞きたいのは、君のことかな、当麻」
 そう言って当麻を見つめたのは伸だった。
「俺? アメリカに行って、向こうでスキップして大学に行ってた。卒業後は、NASAから声もかけてもらったんだが、基本的には大学の研究室に残って研究を続けて、他に時々、親父の研究を手伝ったりしてる」
「ああ、そういえば、君のお父さんて、向こうの研究所にいるんだったっけ。でもNASAとはさすがだね。しかもその話をけったっていうのが君らしい」
「そう。で、あとは年に一度か二度、ここにきて、亡くなった柳生博士の研究結果を見せてもらったり、ナスティの研究を手伝ったりしてた」
「えっ!? 君、ずっとアメリカに行ったきりじゃなくて、こっちに、それも、ここ、に来てたの!?」
「ああ、来てたよ」
「ナスティ、俺たち、そんな話聞いてないよ! なんで言ってくれなかったんだよ!!」
「ああ、悪いな、と思ってはいたのよ。でも、当麻が来るのっていつも突然だったし、あなたたちが通学してる時期だったりして、タイミングがあわなかったのよ。
 それに、そのなんというか、研究に没頭すると、私も当麻も、ね」
 その先は言わずとも分かるだろう、とでもいうように、ナスティはそう告げると当麻と視線を合わせた。
「ずるいよ、ナスティ! 俺、いや俺だけじゃない、みんな当麻はどうしてるだろうって心配して、会いたいって思ってたのに!!」
「そうだよ、ずるいよ! それに何より当麻が悪い! なんで連絡くれないんだよ!!」
 これが20歳を過ぎた男の言葉か、と些か呆れながらも、それでもその気持ちは理解できるナスティだった。とはいえ、状況的に、当麻が来ていることを告げられるような状況でないのも事実だ。当麻はここを訪れても滞在できるのはほんの2、3日に過ぎず、その間、二人揃って寝食も忘れたように研究に没頭してしまう。他に気の回る余裕がないのだ。恥ずかしい話ではあるが、自分一人ではどうしても限界があり、そうすると、当麻が来た時に、彼── 智将天空として── の知識を活用し、そこで二人して一気に研究を進めるような有様なのだから。
「……で、当麻、いつまでアメリカにいるわけ?」
「んー、はっきりとはまだ分からないけど、年内には戻ってこれるかな、ってことかな。どうにか今やってることに目処がつきそうなんで。遅くとも来年の春までには帰ってこれると思う。そしたら、たぶんここに篭ることになる、かな?」
「そうしてもらえると、正直助かるわ」
 二人して話題が変わったことに安心し、当麻は伸の問いに返し、ナスティも思わず本音をこぼしてしまった。
「……なんだかそれもずるい気がする……」
 そう言って唸るのは遼だ。
「で、他の皆はどうなんだ? 皆、大学とか、学校生活は終わってるんだろう?」
 遼の言葉を無視して、今度は当麻が自分の知らない他の四人のことを尋ねる。ある程度はナスティから聞いてはいるが、それでも直接聞きたかったからだ。
「僕は、とある貿易会社に入ってね。いずれは独立したいと考えてるんだけど」
「家はいいのか?」
「姉さん夫婦が継ぐことになった。だから、僕は僕のやりたいことをやっていいって言ってもらえたからね」
「私は、司法の道に進むためにまだ勉強中だ」
「司法か……。弁護士? 検事? それとも裁判官?」
「まだ決めかねているが……、検事か裁判官、になると思う」
 悩みを見せながら征士は答えた。
「おまえには嘘は通じないからな、礼将殿」
「俺は、いずれ家を継ぐために、今は親戚のやってる店で修行中だ」
「そうか、家の中華料理店をを継ぐのか。頑張れよ。で、遼は?」
「俺は、写真家になりたい。父さんと同じだな。でも、たぶん対象は違うものになると思う。動物とか自然とか、そういったものを撮って残していきたいと思ってるんだ。だんだん失われつつあるものが多いから」
「おまえらしいな、遼」
 四人の話を聞いて、皆それらしい道を進んでいるんだと、そう思い、それができている今という時に、当麻は感謝した。
「そういえば、煩悩協に還った迦遊羅たち四人、どうしてるだろうねぇ」
 ふと思いついた、というように伸が口にした。それに返したのは当麻だ。
「あ、それなら、元気にやってるみたいだぜ、妖邪の出現を防いだりしながら」
 当麻のその言葉に、全員の視線が当麻に向いた。
「どうして君がそれを知ってるのかな?」
 代表するように伸が問いかける。
「2、3度だけど、天空の鎧の力をかりてあっちに行ってみたから」
「そんなことできるのか!?」
「試しにやってみたらできた。けど、あっちとこっちじゃ時間の流れが違うから、長い滞在はできないだろう。だから、ホントにちょっと状況を聞くくらいしかできないけどな」
「そっか、元気にやってるのか。ならいいかな」
「でもできるなら、迦遊羅には一人の人間として、普通の娘として幸せになってほしいって思うけどな」
「そうだね、魔将たちはともかく、迦遊羅にはね」
 同感、というように伸が応じた。
 迦雄須一族の最後の末裔である迦遊羅。そうなったのは、両親をはじめとした一族の全てを阿羅醐を主とする妖邪に殺され、たった一人生き延び、その力ゆえに、妖邪の子として育てられ利用されてきた迦遊羅。その生い立ちを思えば、妖邪の子としてあった時は強力な敵だったが、本来の自分を取り戻した今は、普通の幸せを見つけてほしい、そう思ってやまない。ましてや、朱天がその命を懸けて迦遊羅にかけられた呪いを解いたのだから、、そうした朱天のことを思えば尚のこと、朱天の分まで幸せにと、そう思ってやまない。
 しかしそうできないこともまた、彼らは理解していた。迦雄須一族の最後の一人としての立場から、その運命を受け入れ、生き方を自ら定めたのだから。そう、妖邪がいなくなり、本来の煩悩郷の姿を取り戻したあの世界を、再び妖邪が現れ人間界に災いをもたらすことのないように守っていくと。
 ならば自分たちも自分たちにできることをしていくだけだと、遼たちは思う。煩悩郷に妖邪が増えるとしたら、それは相対関係にあるともいえるこの人間界に悪意が満ちた時。だからこの人間界がそうならないように、どれだけのことができるかまだ未知数ではあるが、努力していくのが、かつて阿羅醐たちと戦い、この人間界を守った自分立ちの役目なのだろうと思うのだ。
 その日の夜は、ナスティからアルコールも振舞われ、そのナスティも含め、一晩中、話に花を咲かせた六人だった。



 翌朝、一番早く目覚めたのは征士だった。それにつられるようにナスティと伸。そして過去の経験から、一番遅いのは当麻だろうと、彼らは結論づけていた。現に遼と秀には、目覚めようとするような気配が感じられる。
「朝食はどうする?」
 五人の中ではキッチン担当といっていいだろう伸がナスティに尋ねた。
「ああ、実は当麻から言われていることがあるのよね」
 何かを思い出すかのようにナスティは応えた。
「当麻から?」
「ええ、一昨日、やりたいこと、というか、見せたいものがあるから、外で食べられるようにしてくれって、メールが入ったの」
「朝から外で?」
「昼ならピクニック、と考えることもできるが……」
 伸と征士は二人して分からないというように首を捻った。
 そうしてナスティと伸が朝食の用意を終えた時、当麻がキッチンに入ってきた。匂いにつられて起きてやってきたのかと、伸は一瞬思って、だが当麻の顔を見て、違う、と思った。起き抜けにしては当麻らしくなくはっきりとしている。とても起きたばかりとは思えない。
「用意、できた?」
「ええ、ちょうどたった今」
「じゃ、皆を呼んで出かけよう」
「どこへ行くんだい?」
「そんなに遠くじゃないよ、すぐ分かる」
 当麻ははっきりとは告げず、ただそう答えるのみだ。当麻の性格を考えれば、それ以上の答えは得られないだろうと、伸は居間にいる征士に、二人を連れてくるようにと声をかけ、当麻とのやりとりを耳にしていた征士もまた、何を聞いても無駄だろうと、遼と秀の二人を呼ぶべく立ち上がった。



 当麻を先頭にして、ナスティを加えて六人は、導かれるままに森の方へと足を進めた。少し進むと、幾分開けた感じになっており、そこには、櫻の木が植えられている。ただ、春とはいえ、このあたりでは時期的には開花、それも満開になるにはまだ早いのだが……。
 しかし、そこで当麻を除く五人は、信じられない、というように目を見開いて驚いた。
 まだこのあたりでは咲く時期ではない櫻が満開なのだ。
「……と、当麻、これって……?」
 代表するかのように、彼らの対象である遼が、問いとも言いかねる言葉を口にした。
「せっかくの再会だから、ちょっと風の力を借りてさ、咲かせてみました。どうせなら、満開の櫻の下で、と思って。だって、最初に出会った時も、櫻が満開の時期だったし」
「当麻、おまえが立ち寄って、と言っていたのは、ここでこれをするため、だったのか?」
 かつて同室であったことから、恐らくはナスティを別にすれば、当麻のことを一番よく知っているのではないかと思われる征士が問いかけた。
「まあな」
 当麻は少しばかり恥ずかしげに、頬を若干染めて答えた。我ながら気障ったらしいことをしたかな、と思いつつ。
「見事ね」
 感嘆したようにナスティが呟く。
「皆と一緒にこんな風に満開の櫻を見ることができるなんて、思ってもみなかったぜ」
「……にしても、天空の鎧でこんなことができるとはねぇ……。さすがは智将天空、というべきか、無駄な力使ってるね。嬉しいことだから、まあいいけどさ」
 感心とも呆れとも、どちらともとれる言葉を伸が告げる。だがその言葉の中には、幾分か嬉しそうな響きがあった。
「じゃあ、櫻を見ながら朝食といきましょう」
 ナスティの声で、五人は用意を始め、楽しく、何の憂いもない食事となった。昨日、既に共に食事を摂ってはいたが、こんなに嬉しく楽しい状態で、というのは、阿羅醐を倒した後以来ではないかとも思う。



 そんな六人の様子を見ている者たちがいた。
 煩悩郷にある寝殿造りの奥の一室、水鏡に映し出された彼らを、迦遊羅と、そしてかつて魔将とよばれていた者たちが嬉しそうに見ていた。
「守ってまいりましょう、これからも彼らが二度と戦いに赴くことなどなく、このように幸福な日々を送れるように」
 迦遊羅の言葉に、今は亡き朱天も、きっとどこかで見ていることだろうと思いつつ、彼らは頷いた。

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