Une suite 【3】




 GWが明けて暫くしたある日の大学構内のカフェテラスで、お互いに次の講義が休講となったために快斗と紅子は久し振りに二人だけでゆっくりとお茶をしていた。
「なあ、紅子」
 手元のアイスカフェオレにガムシロップをたっぷり入れながら、快斗が紅子の名を呼んだ。
「何?」
「最近、妙に白馬が浮かれてるような気がするんだけど、俺の気のせいか?」
「ああ、そんなこと」
 快斗の問いに、紅子は自分の分のミルクティを一口含んで、何でもないことのように応えた。
「単に浮かれてるだけよ」
「だから何で?」
「何かと比較されがちな東の探偵さんの鼻を明かしてやれたから」
「そんなことがあったのか?」
 快斗は漸く十分な量のガムシロップを入れ終え、ストローで中身をよくかき混ぜながらさらに問い掛ける。
「何言ってるの、貴方絡みのことじゃない」
「俺?」
 わけが分からないというように、快斗はきょとんとした目で紅子を見た。
「アメリカの黒の組織は、FBIと絡んでやっつけたと思ったらNo.2に逃げられた。その一方、欧州の組織は貴方がメインになって計画を立て実行に移したとはいえ、無事一斉検挙で完全に壊滅させることができた。加えて黒の組織の逃げたNo.2も片を付けたのはICPOで、貴方と彼絡み。その上、何といっても“確保不能”と謳われていた、なぜか珍しく東の探偵さんもムキになっていた誰かさんは自分の腕の中。それで浮かれるなという方が無理な話よ」
 前半はともかく、後半の紅子の言葉に、思わず快斗は口にしたアイスカフェオレに噎せ、顔を赤くした。
「まあ、流石に口にできることではないけれど、それでも浮かれずにはいられない、ってところね」
 思わず快斗は自分の頭を抱え込んでテーブルに懐いた。
「白馬の奴ぅ〜」
「許してあげなさいよ、そのくらい。別に口に出してはいないんだから。それに、解決したのが自分一人でではないとはいえ、国際的な犯罪組織を壊滅させることに関わることができた、そのパートナーとして貴方に選ばれた、そして貴方が無事に自分のところへ戻ってきてくれた、そのことが何より嬉しいのよ」
 快斗はテーブルに懐いたまま、唸るしかなかった。
「白馬君は、貴方の手を取れたことが本当に嬉しいのよ。少々浮かれているのなんて可愛いものじゃない。それに別に何か害が有るわけでもないんでしょ。放っておけばいいのよ、そのうち落ち着くわ」
「紅子ぉ、おまえ、他人事だと思って面白がってるだろー」
「もちろんよ。でも貴方にとっても他人事よ。ただ、そうなっていないのは貴方が必要以上に彼を意識しているから」
 白馬のことが気になるのは、それだけ快斗が白馬のことを意識しているからなのだと言われて、快斗は漸く治まりかけてきた顔の赤さがまた戻ってきた。
「貴方は何も気にせず、普段どおりにしていればいいのよ、普段どおりにね」
 そう言って紅子は、
「図書館に寄るから先に失礼するわ」
 と、飲み終えたミルクティのカップを持って席を立った。
「……普段どおり、ねぇ……」
 それが本人目の前にすると難しいんだよな、と口の中で呟きながら、残っているアイスカフェオレを口にする快斗だった。

── Fine




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