Je porte des blanc




 今夜も俺は白を纏って夜空を翔る。



 父さんがなぜこの衣装を選んだのか、それは知らない。ただ寺井ちゃんの話だと、元々は舞台衣装として用意していたものだったらしい。けれどある事情から舞台衣装として使用するのは無理になり、そのままKIDとしての衣装になったのだと。そしてそれはそのまま、いつしかKIDのトレードマーク、KIDを現す色ともなったと。



 その白の衣装一式を見つけ、さらには父さんが俺に遺したメッセージを聞いた時、俺はその残された白の衣装を身に纏った。父さんが何をしていたのか、それを確認するために。
 その頃には誰か知らないが、父さんが遺したメッセージの中にあったKIDを名乗る人物が活動を再開していた。だから俺はそいつが予告を出した現場に、父さんの遺した衣装を身に着けてそいつを待っていた。そいつの目的を知るために。ひいては父さんが何を思い、何をしていたのかを知ることができたなら、との思いから。
 そして俺は知った。
 かつて父さんがしていたKIDに扮していたのが、父さんの付き人だった寺井ちゃんだったこと。父さんは間違いなくKIDという泥棒であり、そしてさらにはマジックショーの最中の事故などではなく、何者かの手によって殺されたのだということを。
 だから俺は、その場は寺井ちゃんを警察から逃がすために、そして父さんがKIDとなった理由を、その死の理由、真相をいつか知るために、その時から俺は本当にKIDになった。もちろん2代目の、ではあったが、世間的には俺の父さんである魔術師の黒羽盗一がショーの最中に死んだことは知られていても、KIDが死んだことは知られていない。ただ姿を消しただけになっている。確かに死んだのではないかという話も一部では出ていたようだが。
 そうして俺はKIDとして活動しはじめた。とはいえ、父さんの本当の目的がまだ分かっていなかった最初の頃は、ある意味、それなりの予告を出して盗むというだけだった。確かに父さんがやっていたKIDがそうだったように宝石がメインではあったが、それだけではなかった。
 そして寺井ちゃんの協力だけを受けてKIDとしての活動を続けるある日、俺は知った。
 父さんが殺された理由、父さんを殺した奴等の目的を。
 その結果、俺の目的は明確なものになった。父さんを殺した奴等が狙っているパンドラと呼ばれる宝石を、奴等よりも先に見つけること、そしてまた、父さんを殺した奴等の前でその宝石を砕いて、その中に秘められている、永遠をもたらすとかいう“赤”を消し去って嘲笑(わら)ってやること。さらにはそいつ等を、その組織を叩き潰すこと。
 そのために予告状を出し、KIDとして父さんと同じく父さんの遺した白を着て活動することは何よりも効果的だ。予告状を出せば、ましてそこに殺したはずの以前と変わらぬ白に身を包んだ俺がいれば、それは奴等に対しての、奴等をおびき出すための何よりの囮となる。
 確かにある程度の情報を探り出すことは、現在では己自身の力である程度はできるかもしれない。だがそれだけでは核心に近づくことは困難だろうとも思う。それを考えれば、寺井ちゃんや母さんには心配をかけることになるが、俺自身が囮となることは情報を集める傍ら、何よりも一番の有効な手段だと思える。
 だから俺は今夜も予告状を出し、白を纏って夜空を翔るのだ。

── Fine




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