Je veux vous rencontrer




 夜、自室の窓から外を見ると、粉雪が舞っている。明日の朝は、外は白くなっているだろうか。それとも、これは今だけで、明日の朝には綺麗に消えてしまっているだろうか。
 その粉雪を見ながらふと考える。そういえば、今、君がいるパリは札幌と北緯がほぼ同じくらいだったと。それならば、君は東京にいる今の僕よりも寒い思いをしているのだろうと。今頃はパリも雪が降っていたりするのだろうかと。
 そして思う。こんな夜は君に逢いたいと。君を思い切り抱きしめて、温もりを分け合いたいと。
 これからのことを考えれば、そんなことを思う余裕などないはずなのは分かっているが、それでも思ってしまうのは止められない。
 僕は、いや、僕たちは君を一人でパリに送り出した。確かにあちらには、僕の信頼するアネットをはじめとする人たちがいる。そして僕には、君が僕にと託してくれたことがあるのを十分に承知してはいるけれど、それでも君の傍にいたい、君の傍で君を守りたい。そして君が無事であることを確認して安心したいと思ってしまう。
 本当に、何故か今夜はやけに君に逢いたいという気持ちが強い。この窓の外に舞い散る粉雪のせいで少し感傷的にでもなっているのだろうか。
 作戦の実行までもうあまり日がないから、余計に不安が増してそんなふうに思ってしまうのかもしれないとも思うけれど、本当に君に逢いたい。逢いたくてたまらない。
 君が立てた作戦通りに無事に全てを終えて、一日も早く、無事な君の姿を確認して安心したい。
 今夜は他にはもう何も考えられそうにないよ。ただ、君に逢いたいと、それしかない。
 僕はこれほどに君のことを想っているけれど、君も、作戦の実行を前にしても、少しは僕のことを想ってくれていたりしているのだろうか。僕に逢いたいと思ってくれているだろうか。そうであることを願ってやまない。
 君に逢って、抱きしめて、僕の想いの丈を伝えたい。今夜は、普段の僕らしくもなく、本当にそれしか考えられない。
 黒羽君、今すぐにでも君に逢いたいよ── それだけだ。
 

── Fine




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