Vanité




 もしも君の身に何にかあれば、きっと夢枕で教えてくれると僕は信じています。君に言わせれば、そのような僕はとても僕らしくはないというでしょうが。
 僕は信じているのです。君が僕に何も言わずに一人で逝ってしまうことなどないと。
 その思いは、君にすれば、僕の本当にかなり身勝手な思いだと、いえ、怒鳴りつけられるかもしれないと、そう理解しています。けれど、それでも僕は思ってしまう。
 君が一人でフランスに向かった時、どれほど遠く離れていようと、この空は繋がっている。つまり君と繋がっている、だからそれでいい、そして君が無事にいてくれればいいと、そう思った部分もありました。
 けれど会えない日が、声を聞くことさえできない日が続くなかで、君を一人で行かせるのではなかったと思ってしまう僕がいるのです。連絡がないのは無事な証拠ともいいますが、それでもやはり心配してしまう。君にもしものことがあったらと。だから何かあったら夢枕ででも知らせてれると考えてしまう。
 君がそう簡単にやられるはずはないと理解(わか)っていても。
 何よりも君が一人で行ったのは、僕を間にしてとはいえ、向こうには向こうでの信頼できる存在があること。僕に日本のことを託していったのは、それだけ僕を信頼してくれているからだということ。そしてまた、僕と君との間で交わされた想いは、そう簡単なものではないとも思っています。
 だから僕は君を信じている。けれど君を想う心は止められない。
 小泉さんは、たとえ何かあっても必ず君を連れ戻してみせる、決して死なせたりなどしない、そう言ってくれました。赤の魔女だという彼女の言葉を信じないわけではない。
 けれど君や彼女を、かの国の仲間を信じるのと同時に、相手がどれほどのものかも分かっているだけに、どれほど周到に計画を立てようとも、僕の中にどうしても不安感が生じてしまうのを止められない。
 だからなのでしょうね、僕の自惚れだと思いながらも、何かあればきっと君は僕に教えてくれるものとそう考えてしまう。
 こんな僕を、君はきっと馬鹿な奴だと、それほど自分を信じられないのかと罵るかもしれません。でも気持ちは、思いはそう簡単に変えられないんです。
 どうかこんな弱い僕を許してください。これは僕の心の中だけに秘めて、決して他人には悟られたりしないようにしますから。

── Fine




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