ゼロ・レクイエムから、つまり神聖ブリタニア帝国第99第“悪逆皇帝”ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの死から2年。
一人、世界を見て回ってきたC.C.は思う。
結局、ルルーシュが望んだものはただの夢であり、夢は夢でしかなく、叶うことはなかったのだと。
戦争の、争いのない時は、僅か半年ほど。1年にすら満たなかった。
シャルルによる世界各国に対する征服が始まるずっと前から、世界各国が、人類が抱えてきた様々な問題。領土、宗教、民族、飢え、難民、あげればきりがない。
ブリタニア以外の国々が纏まって、超合衆国連合を設立できたのは、ブリタニアという、ある意味、絶対悪があったからだ。それゆえにブリタニアに対抗するために、それまで各国間で問題とされてきたことを一端脇におくことで、纏まりがとれていたと言える。
ところがそれが無くなったことで、それまで蓋をしていた状態の諸問題が、一気に噴出してきた状態だ。
こうなると、さすがにシュナイゼルをブレーンとしているとはいえ、現在のゼロたる枢木スザクの手には負えない。超合衆国連合は、すでに名のみの存在となり、何ら世界に対して纏め役としての役目を果たしていない。
各国の様々な利害の対立は、時に敵の敵は味方、というように、互いに手を組むこともあるが、別の問題では逆の状態を生み出したりすることになったりもしている。
超合衆国連合が纏まっていられたのは、ひとえにブリタニアに対抗するという、共通の一つの目的があったればこそ、そしてそこにゼロという存在があったからこそにほかならない。
世界共通の敵であったブリタニアは無くなり、気付いている者もいれば、気付いていない者もいるが、今のゼロは、超合衆国連合を設立してのけた、表向きには外部機関である黒の騎士団という軍事組織のCEOに過ぎなかったが、実質的には精神的支柱とも言えたかつてのゼロ── ルルーシュ── ではない。ゆえに今のゼロに、かつてのゼロの在り方を求めるのは無理というものだ。枢木スザクは、たとえいくら姿形を真似ようとも、人々が求め、希望を託した、救世主とも呼ばれたゼロとはなりえない。如何にシュナイゼルが優秀であろうと、根本的にルルーシュとスザクは違う存在なのだから。
だからゼロ・レクイエムなどという馬鹿げた計画はやめろと言ったのだ、とC.C.はかつてのルルーシュとの遣り取りを思い出して、改めて思う。
つまるところ、ルルーシュは夢を見過ぎた、人類という存在を信じ過ぎたのだ。己自身は、信じてくれた者たちもいたが、それ以上に、周囲の者たちから何度も裏切られてきたのに、それにもかかわらず、個人ではなく、人類という全体を見て、そしてその未来を信じた。すぐには無理でも、何時かきっと自分が望んだような時代、世界が訪れる時が来ると、そう信じ、賭けたのだ。
だが結局は各国間は利害によって対立し、諸問題から世界は紛争に明け暮れ、それらの問題を原因としたテロも頻発し、時に多くの無関係の人々が無念の死を迎えている。
ルルーシュがあんな死に方を選ばずに生き続け、ブリタニアという大国を治めていけば、その力をもって世界を導いていくことが叶っただろうにと思う。そうすれば、現在、世界各地で起きている問題とて、簡単に片付いたのではないかと。
ルルーシュが望んだゼロ・レクイエムの後に来ると夢見た世界は、訪れなかった。あっさりと崩れ去った。
ルルーシュの死が、同時に彼の夢の終わりの時だったのだ。だが、それはそれで良かったのかもしれないとも思う。こんな乱れた世界を見ずに済んだのだから。
けれどどうしても思ってしまう。ルルーシュが生きていたら、こんな世界にはならなかっただろうと。生きて、生き続けて、そして夢を叶えてほしかったと。
ルルーシュが望み、夢見た世界は脆くも崩れ去り、あっという間に終わりを告げた。
これから先、世界がどのようになっていくのか全く分からない。暗い未来しか思い描けない。
けれどそれでも何時か、遠い未来にでもいい、ルルーシュが夢見た世界になることがあればいいと、C.C.はそう思う。儚き望みかもしれないと思いつつも。
── The End
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