裏切りの騎士




 夢を見た。
 まだこの地がブリタニアの植民地となりナンバリングされる前の、日本という国名を持っていた頃の、自分がまだ子供だった頃の夢を──
 母を殺され、その際に巻き込まれ、両足を撃たれ、また、ショックから目を閉ざしてしまった妹のナナリーと二人、すでに一触即発の状態にあるといっていい日本に、親善のための留学という名目のもと、実質的には人質として、否、相手を油断させるために、行って死んでこいと送り出された。
 その日本での滞在先となった、当時の日本国首相である枢木ゲンブの所有する枢木神社の中に建っている土蔵で、初めて彼── 枢木スザク── と出会った。
 最初の出会いは最悪だった。いきなり怒鳴りつけられ、殴りかかられたのだ。けれど日が経つうちに互いに打ち解けあい、俺にとっては初めての友人と言える存在となった。
 そうして自分やナナリーの置かれている立場はともかくも、それなりに楽しいと言える日々を過ごしていたのに、突然それは起こった。
 何の前触れもなく、ブリタニアが日本に対して宣戦布告し、それと同時に青い空をブリタニアの戦闘機が飛んでいくのを呆然と見上げることしかできなかった。
 ブリタニアは対日本戦に初めて二足歩行の人型戦闘機── KMF── を投入、その機動力の前に、日本は為す術もなく敗れていく。戦争が開始されてから僅か1ヵ月ほどで日本は敗戦した。
 世界地図の上から、日本という国は失われ、かわりに、エリア11という、ブリタニアの植民地がそこにできた。
「僕はブリタニアをぶっ壊す!」
 日本が敗戦を告げた日、俺はそう告げた。それを聞いていたのはスザクだけだったが。そう、スザクは聞いていたのだ、俺の決意を。
 その後、俺たちは俺たち兄妹を探しに来てくれたアッシュフォード家に庇護され、スザクはキョウトへと向かい、別れ別れになってそれからの互いの消息は知りようがなかった。



 スザクと再会したのは7年後、シンジュクゲットーでだった。
 テロリストがブリタニア軍から奪ったとかいう代物── カプセル── を確認しようとしていたところを、突然現れたブリタニア軍人に弾き飛ばされたのだ。
 相手が何者か、何をしているのかも確認せず、いきなり襲いかかってくるとは一体どんな指導を受けているのかと甚だ疑問に思うと同時に、その相手の粗雑さに呆れ、そしてまた怒りが沸いた。
 しかし、相手は自分が倒した相手がブリタニア人の学生であると気付いたからか、マスクを外し謝ってきた。俺は驚いた。なんと外されたマスクの下から現れた顔は、かつての幼馴染であるスザクだったのだから。
 何故スザクがブリタニア軍人などになっているのだ。ブリタニア軍に入っているということは、名誉ブリタニア人になっているということ。一体何故!?
 しかしその疑問を口にする間もなく、スザクの上官が姿を見せ、スザクに俺を殺せと命令した。だがスザクはそれはできないと拒絶し、そして逆に俺の目の前で撃たれた。
 その後、俺はカプセルの中に捕らわれていた少女に、総督である第3皇子クロヴィスの親衛隊に殺されそうになったところを逆に救われ、そして契約を交わした。まだよく理解しきれていないながらも、その契約で得た力を利用してクロヴィスのいるG1ベースに侵入し、シンジュクゲットーに対する攻撃をやめさせ、かねてから疑問に思っていたこと、知りたいと思っていたことを聞いた後、クロヴィスを殺した。俺の、ブリタニアに対する反逆の狼煙として。
 しかしクロヴィスの殺害犯として捕えられたのは、こともあろうにスザクだった。あの時、死んではいなかったのだと、命は助かったのだと、沸いた疑問はさておき、俺を救ってくれたスザクが生きていたことに感謝し、そして仮面を被り、“ゼロ”と名乗って、自分がクロヴィスを殺したのだと公言し、力を使ってスザクを逃がした。
 だがスザクは、俺と共にと差し伸べた手を払い、ルールに従うと軍へと戻っていった。
 あれがあのスザクなのか? 会わなかった7年の間に彼に一体何があったのか。内面は伺い知れなかったが、少なくとも、表面上は今のスザクはかつての俺の知っているスザクではなくなっていた。
 どういった経緯があってか、やがてスザクは皇族の口利きとやらで名誉ブリタニア人の軍人という立場でありながら、アッシュフォード学園に編入してきた。何故ブリタニア軍に、という疑問はさておき、俺を庇って撃たれたことを思い、かつての友誼を思い、スザクとは屋上で二人きりで話をして、今の自分たちはアッシュフォードに匿われているのだと告げ、俺は皆の前でスザクを友人だと宣言した。
 さすがに自分が“ゼロ”だとは言えなかった。何故なら、スザクはブリタニアの軍人なのだから。そしてスザク自身もまた、俺とナナリーに嘘をついた。そうと知ったのは後になってからだったが。スザクは自分は技術部の所属になり、前線に出ることはないと言ったのだ。スザクのその嘘は、俺たちに心配をかけまいとしてのことではあったのだろうが。
 そして訪れた“厳島の奇跡”の二つ名を持つ藤堂に対する処刑の日。
 俺たちはキョウトからの依頼もあり、藤堂に従う四聖剣と呼ばれる四人と共に、キョウトから受け取ったKMFを使って藤堂の奪還を試みた。その中で藤堂の処刑を行おうとし、それを阻止しようとした俺たちを阻むのは、現在、対ブリタニア戦において最も難敵といえる、俺たちが“白兜”と呼ぶKMF。その戦いの中、藤堂がコクピットの一部を断ち切り内部を表に曝したことで、白兜のデヴァイサーが誰か知れた。
 枢木スザクだった。
 技術部だと、前線には出ないと言っていたのに。驚愕が俺を襲ったが、今は藤堂を奪還するのが先決と、スザクのことは半ば無理矢理意識の外に追い出してその場を離れた。その最中、ユーフェミアが立場が明らかとなったスザクを己の騎士にすると表明しているなどとは知りもせずに。
 だがそれが知れ渡るのは時間の問題。それはもちろん俺やナナリーも同じこと。
 ユーフェミアがスザクを己の騎士にすると宣言し、その差し伸べられた穢れも何も知らぬ白い手をスザクが取ったと知った時の俺の驚きは、とても言い表せるようなものではなかった。
 共に過ごした子供の頃、スザクは俺に言った。
「俺、ルルーシュの騎士になる。そして皇帝にしてやる。ルルーシュが皇帝になれば、日本とブリタニアが戦いあうことなんてなくなるだろう? だからさ、俺をルルーシュの騎士にしてよ」
 あの言葉は嘘だったのか。ただの子供の戯言だったのか。すでに忘れてしまったのか。それともアッシュフォードに匿われている現在の俺という存在は、ユーフェミアに劣る者、何の価値もない者だというのか。だから俺を、俺たち兄妹を守るといった誓いを忘れ、見捨てるのか。
 スザクのユーフェミアの選任騎士としての叙任式が終わり、アッシュフォード学園では生徒会主催による祝賀会が開かれた。
 そんな中、俺は本音を隠して、表面上は喜んでいるように笑みを浮かべて、スザクに祝いの言葉を述べるしかなかった。ほかに何ができたというのか。むしろ、そんな態度を通すことができた自分を俺は誉めてやりたいくらいだ。本当なら、大声でスザクを罵り、裏切り者と喚きたてたかったのだから。
 ユーフェミアの騎士となったスザクは、騎士となった後も学園を辞めることはなかった。騎士が主の傍を離れて過ごすなど有り得ぬことだというのに、ユーフェミアの許可があるからと、学園に籍を置き続け、出席の頻度こそ落ちたものの退学はしなかった。
 それが何を意味するのか、スザクには分かっていないようだった。
 アッシュフォードに匿われている俺とナナリーがいる所に、皇族の、しかもこのエリアの副総督である皇女の騎士が俺の友人として在る、その意味をスザクは何ら理解していなかった。
 皇族の騎士となるということになれば、必然的にその者の周辺はチェックされる。ましてやスザクは名誉ブリタニア人。快く思っている者は少ない。いや、ほとんどいないと言っていいだろう。その足元を掬おうとする者の方が遥かに多く、何か無ないかと探る者が絶えないはずだ。そしてそれは、ブリタニア皇室から隠れている俺とナナリーの存在を明るみに出す危険性を多分に含んでいるというのに、スザクは本当に何も分かっていないようだった。気付いていなかった。皇族の騎士という存在の意味するところすら、どこまで理解しているのか。きっと何も理解などしていないのだろう。本当に理解していたのなら、いくらユーフェミアの許可があったからといって、アッシュフォードに籍を置き続けることなどなく、とっくに退学して常に彼女の傍にその身を置いていたはずなのだから。
 そうしてスザクはユーフェミアの選任騎士という立場にありながら、時間があれば学園に顔を出し続け、持論を展開する。ユーフェミアを賛美し、ルールに則るべきだ、ゼロは間違っている、テロなど間違っている、警察や軍に入って中から変えていくべきだと。
 それは如何にスザクがブリタニアという国を理解していないかを如実に表している。ブリタニアは絶対君主制の専制国家だ。国を変える資格を持っているのは皇族、より厳密に言うなら皇帝のみ。他の者がブリタニアを変えることなどできようはずがないというのに。せいぜい、より高位の立場にある者が、少しばかり皇族に自分の考えを明らかにして影響を与えることくらいだ。それをブリタニアの植民地となったエリアの、ナンバーズ上がりの名誉ブリタニア人の、たかだか警察官や軍人になった者が中からブリタニアを変えるなどと、一体どんな夢を見ているのだ。皇女に認められその騎士となったことで勘違いでもしているのか。第一、スザクの言うルールだとて決して絶対のものなどではなく、上に立つ者の意思で幾らでも変わるものだというのに。なのにそんなことすらも理解せずに、持論をさも絶対に正しいと、間違ってなどいないとばかりに繰り返す。スザクの否定する“ゼロ”たる俺の目の前で。一度はそのゼロに救われた身だというのに、それも忘れたかのように。
 やがてやってきたアッシュフォードの学園祭。
 巨大ピザを作成するためにアッシュフォードが未だに所持している、かつて母がデヴァイサーとして協力していたアッシュフォードが開発した第3世代KMFガニメデを使用してのそれは、本職ということで今年はスザクが騎乗して行っていた。しかしその会場に数人のSPを連れてお忍びでやってきた副総督である第3皇女ユーフェミア。その正体が周囲に知れ、取り囲まれたユーフェミアを、スザクが作成中のピザを投げ出して助け出したのは、彼女の騎士たる者としての行動としては正しい。ピザをこよなく愛するC.C.には悔しく悲しいことではあろうが。だがその後がいけない。ユーフェミアは突如そのガニメデの掌の上で宣言をしたのだ、“行政特区日本”の設立を。その宣言に周囲の者はざわめき、一見、喜んで受け入れられたように見えていた。その周囲には今はイレブンと呼ばれる日本人もいたから。だがそんな者ばかりではない。ユーフェミアの視界の外では、それを快く思わない者もいたのだ。何故イレブンなんかのためにと。そして俺とナナリーは、その騒動から身を隠すように学園祭のために建てられた仮設小屋に入り、蒼褪め、震えていた。
“行政特区日本”、その響きはいい。しかしそれが一体何の意味を持つのだろうか。ブリタニアから与えられる日本に何の意味があるのだろうか。ましてや、見聞するからに何の根回しもなく突然宣言だけ先行したようなその内容に。シンジュクゲットーを中心に日本の独立を宣言しようとしていた俺としてはなおさらだ。
 ユーフェミアの説く“行政特区日本”、それは彼女の夢、希望、願望なのだろう。それはいい。しかしそれのどこに現実味があるというのか。ありはしない。彼女にそれを行うだけの能力はないし、彼女の実姉であり、このエリアの総督である第2皇女コーネリアは、きっちりとナンバーズを区別する存在で、ユーフェミアのその構想を全面的に支持し、協力するとは思えない。ユーフェミアのことを溺愛しているコーネリアであれば、マスコミを通して宣言してしまい、おそらくは全土に通じてしまったその宣言を無視すること、完全に反対することはないだろうが、コーネリアが許容するのはせいぜいそこまでだ。
“行政特区日本”、その名の持つ響きの良さに、スザクのユーフェミアに対する傾倒、賛辞はますます激しくなっている。しかし、聞くからにスザク自身もその詳しい内容は不明であるようなのに。おそらくは宣言をしたユーフェミア自身にも、運営していく、という点においては理解しきれてはいないだろう。こうあればいい、というただそれだけで、実際に自分たちブリタニアが支配するエリアに、自治区を作り、それを運営するということがどういうことなのか。そして俺が思うに、例え実行に移されても、それはきっと失敗するだろう。決して長続きすることはないだろうことがよく考えなくても分かる。弱肉強食を謳うブリタニアが心底それを認めるはずがない。仮に認めるとしても、そこには何らかの思惑あってのことに違いないだろうことは簡単に知れる。数あるエリアの中で、もっともテロ活動の激しいエリア11。そのエリアを大人しくさせ、テロを少しでも減らすには確かにいいチャンスではあろうから。
 そして“行政特区日本”は実施された。そこに招かれた“ゼロ”たる俺。俺自身はこの特区構想には反対だった。上手くいくはずがないことが分かっていたからだ。だから逆に利用しようと考えた。しかし二人きりになって話した時の、ユーフェミアの、ナナリーのため、そして、皇籍奉還をしたとまでの覚悟に、俺は折れた。折れてしまった。ユーフェミアの手を取ってしまったのだ。
 だが不幸が訪れる。俺自身気付かぬままに、俺の持つギアスが暴走し、俺がギアスのことを説明し冗談で言った「日本人を殺せ」という言葉が、ギアスとして、絶対遵守としてユーフェミアにかかってしまったのだ。本来の考えであれば、ユーフェミアに俺を撃たせ、この特区構想はテロを、ゼロと黒の騎士団を追いつめるためのものだったとさせるはずだったのに。
 絶対遵守の命令を受けてユーフェミアは会場に飛び出し、ブリタニア兵たちに命じた。その場に集まった日本人を虐殺しろと。もともと特区を快く思っていなかった兵たちは、皇族であるユーフェミアからのその命令に嬉々として従い、次々と日本人を殺していった。ユーフェミア自身も銃を手にして日本人をその手をかけていった。本来ならばその行動を止めるべきであっただろうスザクの姿はどこにもない。そして違うと、そんな命令はしていないと叫ぶ俺の声はユーフェミアには届かない、通じない。次々と殺されていく日本人たち。隠れ潜んでいた黒の騎士団に日本人の保護を命令したが、その行動は追いつかない。多くの日本人が倒れていく。そんな中、一人の老婆が俺に縋る。俺はそれを無視できなかった。元をただせばそれは不幸な経緯であったとはいえ、俺が招いてしまった不本意なことではあったが、とにかく今はユーフェミアの、ブリタニア兵たちの行動を止めるのが先のこと。こうなってしまってはユーフェミアの行動を利用するしかない。それがたとえ彼女本来の意思ではなく、俺のギアスによって歪められたものゆえであったとしても。そして俺は、日本人への虐殺を止めるためにユーフェミアを撃った。それ以外に一旦ギアスのかかってしまったユーフェミアを止める方法はなかったから。
 黒の騎士団は可能な限り日本人を会場から逃がし、そのまま対ブリタニア戦に突入することとなった。
 俺はダールトンをギアスで利用してコーネリアを負傷させ、追い詰めた。だがそこで想定外のことが起こった。ナナリーが誘拐されたと、C.C.が連絡して寄越したのだ。俺は藤堂たちに後を任せて戦線を離脱し、ナナリーが連れ去られたという神根島を目指した。そんな俺を追ってくるのは、V.V.という名の、C.C.と同じコード保持者である者から、彼に必要だと思われる事実の一部だけを伝えられたスザクと、扇から俺を追うように指示を受けたカレンの二人。
 俺を追いつめたスザクは、俺の正体をカレンにバラし、俺を、俺の存在を否定した。
 俺という存在は、存在そのものが間違っていた、いてはいけない、世界から弾かれた存在だと。スザクの言葉から俺の真実の正体を知らされたカレンは、俺を見捨てて逃げ出した。そしてスザクは俺を撃った。
 本当に俺を仇と思うなら、そのまま俺を殺せばよかったものを。だがスザクはそうしなかった。俺をブリタニア皇帝に売ったのだ、己自身の出世、ナイト・オブ・ラウンズという皇帝と皇族を除けば、臣下としては帝国最高の地位と引き換えに。そうすることによって、スザクは気付いていないだろうが、ユーフェミアの仇を討つ権利を失ったのだ。
 そして俺のギアスを否定しながら、皇帝が俺にギアスをかけることに対して協力した。なんという矛盾。敵対する、ユーフェミアを撃ち、死なせるきっかけを作った、つまりは殺したとも言える俺を、ユーフェミアの仇として撃ち、皇帝に売るまでならまだ理解できる。しかしスザクはそれ以上のことをしたのだ。
 スザクは己が否定するギアスを、皇帝が俺にかけるのを手伝い、そして騎士として主たるユーフェミアを守ることをしなかった、守れなかったということを顧みることなく、考えることなく、己の出世を望んだ。それは傍から見れば、主が死んだ途端に他の主に乗り換えるという行為。騎士という存在の本当の意味を理解している者であるならば、決して取らない行為。だが、スザクはそれをしたのだ。スザクはユーフェミアの死を利用したのだ、本人の考えはともかく。端からすれば、それは主であったユーフェミアという存在を、その死を、足蹴にした、己の出世のために利用したとしか見られないというのに。本来の騎士であるならば、たとえ己の主を守りきれずに死なせてしまったとしても、主を乗り換えるなどということは決してしないというのに。なのにスザクは、ユーフェミアが死んだばかりだというのに、俺と引き換えに皇帝の騎士たるラウンズとなることを望んだ。スザク自身はそれをどう考えているのか、己が出世し、ブリタニアを中から変えるために必要なこととでも言うのであろうが、誰がどう見ても、それはユーフェミアを裏切る行為以外の何物でもないというのに。
 ブリタニアの臣下としては最高位のラウンズとなったとしても、所詮は専制国家の臣下。中から変えることなどできない、不可能だということを考えることも理解することもせず、それが可能だなどと、他人に言わせれば、勝手な幻想、夢想を抱き、ユーフェミアの死を利用して皇帝に己の出世を要求した。結果、スザクは主たるユーフェミアを棄てた、裏切ったのだ。スザク自身はそんなことは考えもしていないのだろう。だが外から見るスザクの行為はそれ以外には見えない。
 スザクは己の出世のために、俺がユーフェミアを撃った、スザクにしてみれば、結果として殺したという事実だけに捉われて、友であった俺を裏切り、主であったユーフェミアを守ることもせずにその死を利用して、彼女を裏切った。そう、スザクは裏切り者だ。ブリタニアの本来の騎士の在り方からすれば、彼は裏切りの騎士以外の何者でもない。帝国最高の騎士となろうが、スザクが裏切り者であるということは変えられない。他人は、ラウンズとなった本人の前では決して口には出したりしないだろうが、スザクが騎士としては裏切り者であることは変えようのない事実。
 所詮はナンバーズ、名誉上がりのラウンズ── そういった陰口、侮蔑は決して消えることなく、そしてまた、皇帝の騎士となったとしても、枢木スザクという存在は、周囲からすれば本人の意思、考えは別としても、本来の主を棄てた裏切り者の騎士、それでしかないのだ。

── The End




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