鳥のように




 授業終了のチャイムが鳴った途端、リヴァルがルルーシュに話しかけてきた。
「おいおいルルーシュ、今の自習時間、おまえずっと窓の外見てたけど、外に何かあったのか?」
「いや、何もないよ。ただいい天気だなと。こんな日は鳥のように空を飛んでみたいな、って思って見てただけさ」
「空を飛んでって、確かに飛行日和のいい天気ではありますが、このアッシュフォード学園の、我らが生徒会の優秀なる副会長殿らしくなく、随分ロマンチックなことを考えてたんだな」
「ロマンチックか? そんなものでもないんだがな。けど、たまにはそんなことを考えることもあるさ」
 そんなふうに答えながら再び窓の外を見やると、何の種類かそこまでの判断はできなかったが、遠くを小さな鳥が2羽、競うように飛び交っていた。



 叶うものなら鳥になりたいと思う。
 アッシュフォードが自分たち兄妹のために創ってっくれたこの箱庭から飛び出して、全ての柵から解き放たれて、全てを忘れて唯一人、自由に空を翔けたいと。
 自分たち兄妹を捨てた憎むべき父。
 憎むべき母国。
 それらに見つけられて殺されるかもしれない恐怖。
 自分から被ったゼロの仮面。
 自分が()ち上げた組織、黒の騎士団。
 愛しいと思い、その世話をすることを苦に思ったことはないが、その妹からも。
 自分を知る全ての者から、自分を縛る全ての物から解き放たれて、何処か、誰も知らない処へ、鳥のように自由に翔んで行きたいと、そう思う。
 これほどまでに空に焦がれるのは、もしかしたら自分は前世(むかし)は、本当に鳥だったのかもしれないな、とルルーシュはふと思った。

── The End




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