皇族の騎士




 エリア11の副総督である第3皇女ユーフェミアが、ナンバーズ上がりの名誉ブリタニア人を選任騎士に任命したというニュースは、その日のうちにエリア11内に広まり、ブリタニア本国でも大きな話題となった。もちろん、それは決して友好的な意味ではなく。



『私、ユーフェミア・リ・ブリタニアは、汝、枢木スザクを騎士と認めます』
 中継されている叙任式をクラブハウス内にある生徒会室で見ていた生徒会長のミレイと副会長のルルーシュは、ユーフェミアのその言葉を最後にTVを消した。
「ミレイ、今後のことについて、スザクから何か連絡はあったか?」
 そう尋ねるルルーシュの様子は、何時もの、ミレイにいいように扱われている副会長ルルーシュ・ランぺルージの態度とはかけ離れていた。
「はい、昨日の夕方、電話がありました」
 応えるミレイもまた、常より遥かに真剣で、それは明らかに仕えられる者と仕える者、主従の有り様そのものだった。
「何と言っていた?」
「そのままに申し上げます。「ユフィの好意で、今まで通り学園には行ける時だけですけど通いますから、これからも変わらずによろしくお願いします」と」
「学園に通う? 皇族の選任騎士ともあろう者が、ただ一人の主の傍を離れて?」
 呆れたようにルルーシュは問い返した。
「はい。ユーフェミア様も枢木スザクも分かっていないのですわ。皇族の選任騎士たる者の重みも意味も」
 そう答えを返すミレイの声には、侮蔑の色が混じっている。
「あの方、ゴットバルト卿など、殿下の騎士でありながら常にお傍にあれないことを、あれ程に嘆き悔しがっておりますのに。それでも殿下のおられる此処が殿下をお守りする箱庭であり、私がいると思えばこそ、お傍にいられないことにも甘んじておられるというのに」
「そうか、二人とも分かっていないか。選任騎士とは、常に主の傍に付き従い、主を守り支える者だというのに。スザクはともかく、ユーフェミアも理解していないか」
「はい、残念ながら。しかも皇女ご自身が望まれたのでしょうが、ナンバーズ上がりの名誉に愛称で自分を呼ばせております。皇女の、皇族としての意識にも大いに問題があるかと」
「君臣のけじめすら無いか。如何に異母姉上(あねうえ)がユーフェミアを甘やかして育てたか、ということだな。そんなことでは公私のけじめもあるまい」
「おそらくその通りかと」
 ルルーシュは座っていた椅子から立ち上がり、窓辺に身を預けた。
「騎士の話をしていたら、久しぶりにあれの顔を見たくなったな。私などの騎士になったために苦労ばかりかけているというのに。おまけに、立場や情勢の関係から正式な叙任式もしてやれていないというのに」
「それでもゴットバルト卿の殿下への忠誠に迷いはありません。殿下がどのように動かれようと、どのようなご命令を下されようと、ゴットバルト卿は殿下に付き従うでしょう」
「それはアッシュフォードも、ルーベンとミレイ、おまえたちもそうだろう?」
 ミレイに顔だけを向け、アメジストの瞳を細めて微笑みながら問いかけるように告げる。その様は妖艶と言ってもいい。
「もちろんです。私たちは、常に殿下のためだけに有るのですから。それが騎士たる者の務めです」
「そんなおまえたちからしたら、ユーフェミアたちの有り様は単なる主従ごっこにしか見えまいな」
「当然です。いえ、それ以前に比べられるのも厭ですわ、私はもちろん、殿下の選任騎士たるゴットバルト卿なら尚のこと、そうだと思います」
 騎士たることを自負するミレイの誇りを持った答えに、ルルーシュは嬉しそうな微笑みを見せた。

── The End




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