閑 話 【2】




 宮殿を離れ枢密院へ入ったルルーシュは、初めてシュトライト伯との直の面談の機会を持った。そしてその後、思い出したかのようにエリア11へ通信を繋げるように指示をした。
「エリア11にまだ何か問題でも?」
 今の段階ではエリア11の問題には立ち入らず、暫く様子見だと先刻告げられたばかりであっただけに、シュトライトは疑問に思った。
「ジェレミアがいる。あれとは主従関係を結んで、すでに私の選任騎士となって長いが、今までの状況からあいにくとまだ顔合わせすら済んでいない。ならせめて今のうちに、通信機のスクリーン越しであっても会っておこうと思ってな。エリア11に戻ってからではまた何かと慌ただしい、今のうちに済ませておいた方が良いだろう」
「確かにその通りでございますな。さっそく通信を繋げるよう手配致します」
 そう言って一旦下がったシュトライトは、通信室でエリア11の政庁に連絡を入れると、ジェレミアを呼び出してもらうように手配し、一方で、ルルーシュに準備ができたことを伝えに戻った。
 通信室に入ったルルーシュは、ほぼ同じタイミングでやってきたジェレミアと、スクリーン越しとはいえ、初めて顔を合わせることとなった。
「ジェレミア・ゴットバルトか。お互い、顔を合わせるのは初めてだな。私がルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ」
『はっ、初めてお目にかかります。ジェレミア・ゴットバルトでございます。かつては母君マリアンヌ皇妃をお守りすること叶わず、大変申し訳ございませんでした』
 ジェレミアは、未だマリアンヌを守れなかったことを後悔しており、ルルーシュにそのことを詫びた。
「母のことはすでに7年も前に済んだことだ。それよりも、そなたを私の選任騎士に任じながら、諸般の事情から今日まで一度も顔を見せることもなく、叙任式もしてやれず、済まなく思っている」
『そのようなことをお気になされることはございません。状況はシュトライト伯からお聞きしております。そのようなことよりも、私のことを覚えていていただき、任務を全うできなかったにもかかわらず、私如きを猊下の騎士にしていただきましたこと、誠に光栄の至りでございます』
「しかしこれから私がいずれエリア11へ戻れば、そなたは後悔することになるやもしれんぞ」
『何を仰せになられますやら。どのような事であれ、それが猊下のご命令であれば、それに従うのが騎士たる私の忠義にございます。何なりとお命じくださいますよう。ご遠慮は無用にございます』
「嬉しいことを言ってくれる。期待しているぞ」
『はっ、ありがたき幸せ』
「次に連絡を取るのは、私がエリア11へ戻って暫く経ってからになるだろう。その際には、一旦ブリタニアを裏切った形を取ってもらうことになるやもしれん。それでもよいのだな?」
『ご命令であれば、否やはございません』
「ではエリア11で、今度は直に(まみ)える日を楽しみにしていよう」
『はっ、畏まってございます』
「ではまたな」
 最後にそう一言告げてルルーシュは通信を切ったが、その先、エリア11では、今は亡きマリアンヌによく似た容貌のルルーシュに、スクリーン越しとはいえ、漸く会えたことに感涙しているジェレミアがいた。

── The End




【INDEX】