想 い




 殿下、私のたった一人の殿下、お慕い申しております。
 もうそれを口にすることはないけれど、初めてお会いした時から、この気持ちだけは変わらずに今もあります。
 殿下と、殿下が誰よりも大切に思っていらっしゃる妹姫のためのこの箱庭。
 殿下が修羅の道を行くと決められたのなら、私は、その妹姫と、殿下が帰ってこられる場所であるこの箱庭を全力で守りましょう。それが箱庭の番人たる私の務め。
 できることなら、殿下の傍で、殿下を守って戦いたいけれど、殿下はそれをお許しにはならない。
 殿下は私には何も知られていないとお思いでしょうが、お慕い申し上げる殿下のことが分からなくて、どうして箱庭の番人を名乗れましょうか。
 何も仰られず、ただお一人で修羅の道を行かれる殿下に、せめて後顧の憂いのないように、何も知らない振りをして、ただこの箱庭を守り続ける、それが私の務めと、殿下が私に許されたことと思うのみです。
 殿下、どうぞ御身ご無事で、何時の日にか必ずやご本懐を遂げられますよう、それをお祈りするのみでございます。

── The End




【INDEX】