フジの“行政特区日本”に集まった100万人は、ゼロの計略の元、国外追放となり中華連邦の蓬莱島に渡った。
そしてその際、枢木スザクはエリア11に残ったイレブン── 日本人── を守ることをゼロに約束させられた。本人もそのつもりであった。しかし── 。
神聖ブリタニア帝国第1皇子オデュッセウスと中華連邦の象徴である天子の婚儀が決まった。シュナイゼルの手腕と、中華の大宦官たちの思惑の元に。
そしてそのオデュッセウスと婚儀に出席するシュナイゼルたちの警護のために、エリア11に来ていたラウンズたちは揃って中華連邦へと渡った。
スリーのジノ・ヴァインベルグとシックスのアーニャ・アールストレイムはともかく、行政特区日本の式典の場において、はっきりと残された日本人を守ると明言しながら中華連邦へと赴いた枢木スザクに対して、イレブンからも名誉ブリタニア人からも批判が起こった。
あの約束はその場だけのものだったのかと。
約束を守る気など最初から無かったのかと。 所詮枢木スザクは己の出世だけを願い、それを叶えた裏切り者に過ぎないのかと。
数日だけのことだったなら、そこまでの批判は起きなかっただろう。
だが何時まで経ってもエリア11に戻ってこないどころか、そこで中華連邦の蓬莱島に亡命した黒の騎士団と矛を交え、そのエースパイロットを捕獲したことに── 実際に捕獲したのは中華の武官である黎星刻であり、その身柄を譲り受けただけだが── やはり枢木スザクの言うことなど信用できない、奴は日本人の裏切り者でしかないのだとの意見が大勢を占めていく。
本人の知らないところで、本人の意図とは別に、何よりも本人の行動がエリア11に残っている者たちに失望を与えていく。
枢木スザクは日本人でありながら、しかも日本最後の首相枢木ゲンブの嫡子でありながら、さっさと名誉ブリタニア人となり、ナンバーズ── イレブン── となった日本人の、独立のための希望であったゼロを捕縛してブリタニアの皇帝に売り飛ばし、己だけの出世を図った薄汚い裏切り者。
そこに本来の同胞たる日本人を守るなどという気はさらさら無いのだとの思いが、日が経てば経つ程に日本人たちの間に浸透していく。
スザクがエリア11に戻ってきても、最早多数の日本人のその意識は変わることはなかった。 所詮奴は裏切り者、ゼロとの日本人を守るとの約束など、奴は忘れて放棄したのだと。
しかしブリタニアに属し、ブリタニア人に囲まれた状態にあるスザクには、かつての日本人たちが自分をどう見ているのか分からない。分からないからそれを改善しようという気も起きない。
だから何時まで経っても、ゼロとの約束を放棄した裏切り者との彼らの認識を跳ね除けることができない。
知らないことが、気付かないことが、スザクにとって幸か不幸か。
自分の思いを口に出して言うことのできないことは、紛れもなくスザクにとって不幸なことだったろう。
だがたとえ口に出したとしても、スザクが思い描いているのはナイト・オブ・ワンとなってエリア11を譲り受けること、すなわちブリタニアからの間接統治であって独立ではない以上、独立を望む日本人に受け入れられるわけはないのだ。だが自分の考えに固執し、それが正しい方法と考えているスザクにはそれが分からない。
多くの日本人が思い、考えているのは、枢木スザクはすでに日本を捨てたブリタニア人であり、彼が日本を守ることを、日本人を守ることを放棄したということだけなのだ。そうである以上、日本人が枢木スザクによってブリタニア人から守られることはないと。
そしてそれは、スザクの考えが、その行動が変わらない以上、ラウンズというブリタニア皇帝の騎士という立場にある以上、日本人から見た変わることのない枢木スザクに対する認識なのである。
── The End
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