ルルーシュにとって日常とは、朝起きて朝食を摂ってからクラブハウスを出て学園に登校し、時に真面目に授業を聞き、時に不真面目に考えている振りをして居眠りをして過ごす。
リヴァルに誘われるまま賭けチェスに出かけて貴族共を凹ませ、大金をせしめる。
時に、生徒会室で生徒会副会長として会長であるミレイが貯めた書類の整理に追われ、時にミレイ発案のとんでもないイベントに巻き込まれながらもそれをどうにか遣り過ごしてクラブハウスに戻る、というものだった。
それが変わったのは、ある日の賭けチェスの帰り、事故のためにリヴァルとはぐれ、C.C.という名の魔女と出会い、彼女からギアス── 絶対遵守── という力を得てからのことだ。
そして生き延びるために、無用な殺戮から人々を守るために、総督である異母兄のクロヴィス・ラ・ブリタニアを殺した時から。
仮面で顔を隠し、つなぎのスーツとマントを身に纏い、“ゼロ”という記号を名乗って恨み深き祖国ブリタニアと対峙する。
そのために黒の騎士団という組織を作り、賭けチェスの縁から、とある貴族から大型トレーラーを譲り受けてそこを本拠地として活動を開始した。
それはもっぱら放課後から夜にかけて、あるいは休日のことで、おかげでリヴァルからすっかり付き合いが悪くなったと言われている。
それでも祖国への反逆は止められない。
母の死の真相を突き止めるため、そして妹ナナリーの望む“優しい世界”を手に入れるため。そのためには今のブリタニアをぶっ壊さなければならない。
しかし非日常だったゼロとしての在り方が、どんどんと日常の中にも紛れ込んでくる。
昼間に団員にかける、あるいはかかってくる電話。
授業をサボって黒の騎士団としての活動をする時。
それらが、黒の騎士団のゼロとしての部分が、だんだんと普段のルルーシュとしての日常の中に立ち入ってくるようになって、どこからどこまでが日常── ルルーシュ── で、どこからが非日常── ゼロ── なのか、分からなくなってくる。
それとも、もう全てが、ルルーシュ・ランペルージとしての生活も、ゼロとしての活動も、その全てが日常に組み込まれてしまったのだろうか。
そうして本来の自分であったはずのルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、もう何処にもいない。
── The End
|