魔女の涙




 魔女の眦に一粒の涙が浮かんだ。



 魔王が死んだ。
“悪逆皇帝”と呼ばれた神聖ブリタニア帝国第99代皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが死んだ。
 第2次トウキョウ決戦の際に死んだと言われていた正義の味方、復活したゼロの剣にその身を刺し抜かれて死んだ。殺されたのだ。
 沿道の観衆は皆、独裁者の死に喝采を送っている。
 そんな中で、ただ一人、魔女── C.C.── の頬を一筋の涙が伝う。
 それを見た者は思うだろう、歓喜の涙だと。
 違う、そんなものではない。
 これは悲しみの涙だ。表情を見れば簡単にそうと分かる。
 自分を共犯者と呼び、おまえが魔女なら自分が魔王になればいい、そう言った、(なが)時間(とき)を生きる魔女にとってただ一人の男が死んだことへの哀しみの涙だ。
 永い不老不死の時間の中で、たった一人、真の意味で自分の共犯者だった男を失った涙だ。
 泣くことなど、すっかり忘れていた。
 自分の中に涙なんていうものが残っているとは、魔女自身思ってもいなかった。
 その魔女の頬を、一筋の涙が止めどなく流れ続けてゆく。



 魔女の愛した魔王はもうどこにもいない、もう二度と現れない。
 魔王を失った魔女は、これからは未来永劫に渡ってただ一人きりの孤独の時間を生き続けるのだ。

── The End




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