皇帝直轄地となったトウキョウ租界の中心道路をパレードが進む。
もちろん、パレードの中心人物は、今や世界を統一した神聖ブリタニア帝国第99代皇帝にして、超合集国連合最高評議会議長、黒の騎士団CEOを兼ねるルルーシュ・ヴィ・ブリタニアである。
それに続くは、敵として戦い破れ、磔にされた戦犯たる者たち。
不意に、パレードが停止した。目を凝らせばその先に細いシルエットの人物が一人佇んでいる。
ゼロだった。第2次トウキョウ決戦の折、黒の騎士団から死亡報告がされたはずのゼロだった。
ゼロはパレードの先頭にある警護のためのKMFから打ち込まれる銃の弾丸を器用に避けてルルーシュのみを目がけて進んでくる。
今や、ルルーシュの第一の騎士となったジェレミアすらも押しのけて、ルルーシュに詰め寄る。
ルルーシュが懐から出した銃を、腰に帯びた鞘から抜いた剣で弾き飛ばすと、そのままルルーシュの心臓に剣先を当てて貫いた。
剣に貫かれる熱さと、何よりも痛みとに顔を歪めながらも、ルルーシュは微笑っていた。それは目の前にいるゼロにしか分からないほどのものだったが、確かに、彼は間違いなく綺麗な微笑みを浮かべていた。
躰を、心臓を貫いていた剣が抜かれると、躰を支えるものが無くなったことで、ルルーシュの躰は玉座から滑り落ちていった。
ルルーシュが落ちたところに捕らわれていたナナリーが、ゼロの手にかかり今にも命を落とそうという状態にもかかわらず、微笑を浮かべていることを不思議に思い、「……お兄さま……?」と呼びかけながらその手に触れる。
触れた途端に伝わってくる、ルルーシュの記憶の端々、その想い。
「!? お兄さま、愛しています!」
── ああ、俺は、世界を壊し……、世界を創る……。
「お兄さま、嫌ッ、目を開けてくださいっ!!」
── 父上たちの望んだ昨日でもなく、異母兄上が創ろうとした今日でもなく、俺は明日を創る……。
ナナリー、おまえの願いを叶えるために、世界が、人々にとって優しい世界になるように……、俺は今、橋になろう。おまえの夢を渡らせるための橋に……。
だからその夢を信じて、どうか、おまえはおまえの道を行くがいい……。
「お兄さま、狡いです。 私はお兄さまだけで良かったのに。お兄さまのいない明日なんて……あああああっっ!!」
すでに息絶え、命尽きた兄の躰に取りすがってナナリーは嘆き続ける。
── The End
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