ロロ── 偽りの弟── は言った。
「……兄さんは、嘘つきだから……」と。
ナナリー── 真実の妹── が告げる。
「お兄様もスザクさんもずっと私に嘘をついていたのですね。本当のことをずっと黙って……。でも、私は知りました。お兄様がゼロだったのですね」と。
自分もまた、アッシュフォードにいた時、『ランペルージ』という嘘をつき、第2次トウキョウ決戦ではフレイヤ弾頭の中に死んだと思わせ、総督たる責任を放棄しながら、その嘘── と言っていいだろう── を認めず、異母兄の住民は避難させたとの嘘を信じて、自国の帝都ペンドラゴンへのフレイヤ弾頭投下を認めながら、俺が黙っていたことだけを嘘だと詰める。
何故俺がおまえに黙っていたのか、何故そんな行動を取ったのか、取らざるを得なかったのかを考えることもせずに、異母兄の甘言だけを盲目的に信じて、真実を知ろうとする努力すらせずに俺だけを責める。
生まれてから14年の間、共に過ごし、戦後、アッシュフォード家に匿われてからは共に『ランペルージ』という偽りの日常を送りながらも、おまえは嘘をつき続けなければ生きていけなかったことに気付いてはいなかったのだろう。
だから皇室に戻されてから、第87位という低位の継承権であり何の後ろ盾もない身でありながら、エリア11の総督になれた事を不思議にも思わなかったのだろう。
俺という、ゼロという偽り── ある意味、真実── の姿を持つ俺に対する枷とし、同時にまた、俺を、そしてひいてはC.C.を誘き寄せるためだとは。
第一、おまえは太平洋上で出会った際、気配はおまえの兄ルルーシュである時と変えてもいなかったのに、表面の嘘に騙されてそれが俺だと気付きもしなかった。 それに引き替えロロは、弟いう名の監視役として僅か一年傍にあっただけだった。にもかかわらず、ロロは俺が嘘つきだと、嘘をつかなければ生きていけないのだということを理解していた。
ナナリー、おまえは俺が常に傍にあり、俺がおまえを守ることがあたりまえで、俺のことを理解してはいなかった、理解しようとはしなかった。そうしてしまったのは俺の責任なのだろう。
しかしその理解の差が、おまえとロロを俺の中で大きな比較対象とする。
俺を理解しない真実の妹と、俺を理解した偽りの弟。
ナナリー、母を同じくする唯一の妹よ、おまえを愛している。けれどそれ以上に、俺を誰よりも理解し、俺の命を守ってこの腕の中で逝ったロロが誰よりも愛しくてならない。
ロロ、たとえ血の繋がりはなくとも、共に過ごしたのが僅か一年でも、真実おまえだけが俺の家族、俺だけの弟だ。
── The End
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