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 もしナナリーがいなかったなら。
 もしもナナリーが母上と一緒に身罷っていたなら、俺はもっと投げ遣りになっていただろう。
 日本に一人送られても、スザクと仲良くなって友人関係を築くことはなかっただろう。
 戦後アッシュフォードに庇護されても、俺は投げ遣りで、自分のことなどどうなってもいいと考えていただろう。
 リヴァルとは友人関係を結んだかもしれない。誘われるままに賭けチェスに手を染めていたかもしれない。ミレイのイベントには振り回されていたかもしれない。
 けれどそれだけだ。誰がどうなろうと関係ない。
 従って魔女と出会うこともなければ、テロリストや主義者と思われてクロヴィスの親衛隊に命を狙われることもなく、ギアスという力を貰うこともなかっただろう。
 当然クロヴィスを殺害することもなく、もし万一殺害したとしてもその容疑者になったスザクを助けようなんてしなかっただろう。
 テロリストのゼロとなって、黒の騎士団なんてものを創ることもなかっただろう。
 当然ブリタニアへの反逆なんて考えもしなかっただろう、心の底では思っていても。
 日々、自分の生死にすら頓着することはなく、ただ流されるままに生きていたに違いない。
 もちろん、母上とナナリーを殺した奴を知りたい、仇を取りたいという気持ちはあるが、何の力もない自分にできる事は何もなく、ただ思うだけで時は過ぎ去っていっただろう。
 その結果は父上たちの計画通りの“ラグナレクの接続”がなって、神殺しが成功したかもしれない。
 そしてもしその通りになっていたら、俺は父上や母上を罵って罵って罵倒しまくっていただろう。
 結局、人間皆が分かりあって、人類の心が一つになるなんてことはなくて。
 きっと父上は落ち込んだことだろう、自分の人生の大半をかけて為し遂げたことが何の意味もなさなかったと知って。いい気味だ。所詮、人生なんて誰しも思う通りになんて生きられやしないのだ。



 もしもナナリーがいなかったら、俺の人生は灰色で色の無い、生きるに値しない世界になっていたに違いない。
 だから結果的にナナリーがシュナイゼルの駒となって俺と敵対することになったとしても、やはりナナリーは俺にとっては必要な存在だったのだ。

── The End




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