初 恋




 今まで、好きだと思った人が、付き合った人がいなかったとは言わない。
 でも、ここまで想える相手はあなたが初めてだった。だから、これが私にとって本当の初恋なんだと思う。



「死ぬな! 死ぬんじゃないっ!!」
 あなたの必死な声が聞こえる。あなたが泣きながら叫んでいるのが分かる。でも、だんだん視界が朧になってきて、最期まであなたの顔をしっかり見て記憶に留めておきたいのに、見えなくなっていく。
 どうしてか、この一年ほどの間の記憶がふいにおかしくなって、ううん、それ以前のことを思い出して、そして分かった。
 ああ、今、あなたは独りなんだ、って。他には誰もいない。以前の本当のあなたの事を知っている人はいないから。そしてそれは、あの人のせい、なんだよね。あの人は、あなたは幼馴染の大切な親友だって言ってたけど、でも違うよね。以前はそうだったかもしれないけど、今のあの人は、あなたにとっては、敵、でしかないんだよね。本当の妹のあの子も、今のあなたのことを知らないし、捜そうともしていない。
 私は、あなたの全てを知っているわけではないから理由は分からないけど、でもこれだけは分かる。
 あなたはずっと独りで戦ってきた。以前も、そして今この時も、独りで戦い続けている。これからも、きっとそうなんだよね。だって、本当のあなたを思い、そして理解している人は他にはいないから。少なくとも私にはそう思えてならないから。
 私は何故か思い出すことができたけど、でも、私の命はもうすぐ燃え尽きる。そうしたら、あなたはまた独りになってしまうんだね。そんなことにはさせたくないけど、でも、もう私には無理。これ以上あなたの傍で、あなたを支えることはできない。あなたは独りじゃないって、言ってあげられない。
 誰がなんと言おうと、他の誰よりもあなたが好き、大好き。お父さんが死ぬ原因があなたにあったと知った後、一時はあなたを殺したいと思いもしたけど、親不孝だと分かっていても、私にはできなかった。だって、あなたが好きで好きでたまらなかったから。その想いを棄てられなかったから。だから、あなたは私にあなたの事を忘れさせたりしたんだよね。けど、それを含めて、今、全てを思い出して、そして想うのは、やっぱり私はあなたが大好きだっていうこと。この想いだけはどうしたって変えられない。
 初恋は実らない、ってよく聞くけど、会長が企画したイベントで学園公認のカップルになることができて、私には当てはまらないなって思ったけど、やっぱり本当のことだったね。だって、今の私はあなたを独り遺して逝こうとしているんだから。
 あなたは必死に「死ぬな!」って言ってくれるけど、でも、もう止まらない。私の命── ── は、今こうしている間にも流れ続けているから。
 だから、せめて私の想いを告げておきたい。私はもう傍にいられなくなるけど、せめて想いだけは遺して逝きたいから。

「ルル、大好きだよ。何があっても、あなたが好き。生まれ変わっても、きっとまた、あなたを好きになる」

 だって、記憶を()くした後も、またあなたを好きになったもの。だからこの想いは変わらない。そう自信をもって言える。生まれ変わったら、きっとあなたを見つけて、またあなたを好きになる。たとえあなたの全てを知らなくても、それでもあなたの本質は理解できているって思うから。これは私の勝手な思い込みかもしれないけど。でも、そう思わせておいて。
 あなたの私に対する想いは、私のあなたへの想いとは違うかもしれないと思うけど、でもどうか、私の事を忘れないで。私があなたを大好きだったっていうことだけは忘れないで。私にはあなただけだから。
 私のこの想いは、もしかしたらあなたにとっては重いだけかもしれない。でも、勝手なことだけど、私の事を忘れて欲しくないの。だから、あなたを独り遺して逝く私の事、お願いだから忘れないで。
 何時までも、何があっても、あなたが大好きよ。私にはあなた以上に想える人はいない。本当に、あなただけが大好きだよ。
 ああ、もうあなたの顔が見えない、声も聞こえなくなってきた。もう、これで私は終わりを迎える。だから最期にもう一度……。

「ルル、たとえ何があっても、何時までも、大好き、だよ」

 ルル、あなたを、永遠に愛してる─────

── The End




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