流転の果て 【おまけ C.C.編】




 C.C.は現在再建なったアッシュフォード学園のクラブハウス内で、ルルーシュや彼の騎士であるジェレミアたちと同居している。以前と違うのは、隠れてルルーシュと同じ部屋ではなく、単独の部屋であることである。
 今朝もピザの良い匂いに誘われて目が覚めた。咲世子は心得たもので、毎朝きちんとピザを焼いてくれている。
 身支度を整えてダイニングに行くと、すでにルルーシュとジェレミア── 最初は主と同じ席になど畏れ多いと遠慮していたのだが、ルルーシュに言われて同席するようになった── が席についていた。C.C.の席には焼かれたばかりの美味しそうなピザがすでに置いてある。
 C.C.は席に着こうとした時、咲世子の自分を見る不審そうな目に気が付いた。
「咲世子、どこか変か?」
「いえ、変、というのではありませんが……」
 歯切れの悪い咲世子の言葉に、ルルーシュとジェレミアも顔を上げてC.C.を見た。
「あの、少しお太りになられたように見受けられて……」
「太る? 私が? 冗談ではないぞ。コードを継承して不老不死になってからこの方、1sとも痩せたことも太ったこともない」
 C.C.は胸を張って言ってのけた。
「そういえば、髪の毛も少し伸びたようだな」
 脇で聞いていたルルーシュもそう告げる。
「気のせいだろう。不老不死の私の髪がどうして伸びるんだ」
 そう答えながらC.C.は席に付いてピザを食べ始めた。が、食しながらも咲世子とルルーシュに言われたことを考えてみる。
 ── 太った? そういえばここ数日、洋服がきつくなってきたような気がする。髪が伸びた? そういえば、確かに最近前髪を邪魔に感じることがある……。
 思い当たったC.C.は食事も途中で席を立ち、自分の部屋に駆け込んだ。
 残された三人は呆然とそれを見送った。何せあのC.C.がピザを食べている途中で席を外したのだ。呆然としようとも不思議はない。
 慌てて自室に駆け戻ったC.C.は、クローゼットを漁り、全身が映る姿見の前で次々ととっかえひっかえ着替えをした。
 確かにどれもきつくなっている。中にはきつくなっているどころか、ウエストのホックが止まらないスカートまであった。
 そしてまた鏡でよくよく自分の顔を見てみれば、髪の毛が目の半分を覆っている。これでは邪魔に感じるのは当然だ。
 太り、髪の毛が伸びる── コードを継承してからは有りえぬことが起きている。ということは、つまり私の中の時間が動いているということで、それはつまり、不老不死から解放されたということか? だが何故?
 C.C.は自問自答するように考える。そしてハタと気が付いた。
 あの時、ルルーシュが神にギアスをかけた時、ルルーシュは何と言った?
 確か「時を止めないでくれ、俺は明日が欲しい!」(多少違っているかもしれないが)だったはずだ。
 そこから考えるに、神がその願いを受け入れ、不老不死者の時すらも止めるのを止めて動かし始めたということか!?
 ということは、自分はもう不老不死者ではない。コードを誰か── ルルーシュ── に押し付ける必要もなく願いが叶ったということか。何ということだ! そう思い至ったC.C.は喜びに湧いた。
 が、ハタとこれまた気が付いた。
 自分の好物は紛れもなく、ピザ! である。そしてピザは高カロリー! それを今までのように食べ続ければ間違いなく太る。いや、すでに太り始めている。体型を保つには食べただけのカロリーを消費すべく運動するしかない。だがC.C.は運動は好きではない。ダラダラしている方が至って好きだ。
 不老不死から解放されたのは純粋に嬉しい。しかし思い切り好きなだけピザが食べられなくなるのを考えると、なんだか素直に喜べなくなった。

── The End




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