仮初の学生生活




 ルルーシュ・ランペルージ、17歳。私立アッシュフォード学園高等部2年在学中。ちなみに生徒会副会長。趣味はチェス。
 中等部に在籍する妹のナナリー・ランペルージに視力と両足に障害があるため、学園側の特別の配慮によって寮ではなくクラブハウス内の居住棟にて生活中。
 学業の成績は上の下から中の上といったあたり。しかし同じ生徒会に所属しているクラスメイトのシャーリー・フェネットに言わせれば、ルルーシュはもっと出来る子で、出来るのにやらない子、という評価。
 実際、授業は教師に分からないように上手く居眠りしていたり、授業をサボって悪友のリヴァル・カルデモンドと共に賭けチェスに出かけたりと適当に手を抜いている。
 けれどそれらは全て表向きの顔。
 ランペルージという姓はあくまでID上のものに過ぎない。
 本名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。神聖ブリタニア帝国の元第11皇子であり、元皇位継承権第17位であった。
 しかし公には、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、妹のナナリーと共にすでに鬼籍に入っている。七年前のブリタニアの対日本侵攻の際に死んだことになっているからだ。
 ルルーシュは妹のナナリーと共に、母である皇帝の第5皇妃マリアンヌがテロリストによって殺された後、親善のための留学という名目で日本に送られた。そして二人がいるのを承知の上で、ブリタニアは日本に対して宣戦を布告して戦端を開き、KMFという人型二足歩行兵器という新兵器の投入もあって、僅か一ヵ月余りの戦いで日本を占領下に置いた。
 ブリタニアの国是は弱肉強食。覇権主義国家であり、皇帝の命令の下に植民地を世界中に増やし続けている。
 ブリタニアでは弱者は生きてはいけない。それは皇族であっても同じことだ。そのいい例がルルーシュたち兄妹だ。皇妃であった母マリアンヌが死んだ時、守れなかったとして後見であったアッシュフォード大公爵家は爵位を剥奪され、守ってくれる者のいないルルーシュとナナリーは弱者として、皇族であるというその価値だけで、人質、否、人身御供として行って死んでこいと日本に送られたのだ。
 ブリタニアの日本侵攻の結果、日本は敗戦してブリタニアの新たな植民地となり、日本という国の名を奪われてエリア11という番号で呼ばれるようになった。そしてそこに住む日本人は、ナンバーズ、すなわちイレブンと呼ばれるようになり、弱者となって、真面な人権すら認められていない。
 そんな中をどうにか生き延びたルルーシュとナナリーは、戦後直ぐにエリア11となった日本にやってきたかつての後見であるアッシュフォード家に庇護され、もしそのままブリタニアに戻っても、弱者として再び別の国に人質として送られるか、さもなくば態のいい飼い殺しになるか、最悪、暗殺される可能性も否定出来ず、それが目に見えていたことから、アッシュフォード家の当主ルーベンとルルーシュは、話し合いの結果、皇子皇女としての二人は死んだこととして、偽りのIDを作った。それがランペルージの姓だ。
 そうして二人の兄妹は、アッシュフォード家がトウキョウ租界に創設した二人のための箱庭たるアッシュフォード学園に、一般人として在籍している。
 ルーベンとルルーシュたちが最も恐れるのは、ルルーシュたち兄妹が皇族であると、日本侵攻の際に死んだとされる“悲劇の皇族”であると知られること。知られた時の運命はすでに分かりきっている。それだけは避けねばならない。だから学園という箱庭の中で、目立たぬように表に出ずに生活している。
 しかしルルーシュの心の中にあるのは、皇族と知られることに対する恐れだけではない。
 何故母が死なねばならなかったのか、殺されたのか。警備の厳重な宮殿の中においてテロリストの襲撃を受けるなど考えられない。誰かの手引きでもなければ不可能な事だ。一部で皇帝の寵愛を一身に受ける母を恨んで他の皇妃が暗殺を企んだという説は、母の死の直後からあった。その母の死の経緯を、真犯人を知りたいと思う。
 そして何よりも、ブリタニアという国が、皇帝である父が憎い。
 母を見殺しにしただけではない、その犯人捜し出すことなく放置し、自分の子供であるルルーシュとナナリーを名目上はどうあれ、平然と人質として送り出し、その滞在先である日本を植民地とすべく戦端を開いた父。
 ルルーシュにしてみれば、弱肉強食という弱者の生きられない誤った国是を唱え、世界攻略を繰り広げ続ける母国とその皇帝たる父に対して抱いた憎しみは消えない。
 何時の日にかブリタニアをぶっ壊してやると誓ったのは、日本が敗戦した折りのこと。その時の誓いは今もって変わらない。何時の日にか必ず為し遂げてみせると、その思いは日々募りこそすれ、薄れることはない。
 けれど何の力もない今は、ひたすらブリタニアの皇室から隠れ住むしかない。
 何時の日にか力をつけ、チャンスを見つけて、本当にブリタニアを壊すことの出来る日が来るのか。ブリタニアはあまりにも大きすぎて今はまだ何も分からないが、思いだけは決して変わることはない。
 そうして今はルーベンの孫娘であり、アッシュフォード学園高等部の生徒会長であり、ルルーシュとナナリーの真実の姿を知っているミレイ・アッシュフォードの催すイベントに巻き込まれながら、仮初の学生生活をエンジョイしている振りをし続ける。

── The End




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