ブルースカイブルー



 青い空の下、戦勝パレードが進む。
 一握りの者だけが知っている、このパレードの意味を、これから何が起きるのかを。
 それは、彼らにしてみれば、俺にとっては他の誰にも理解されない可能性が高い悲しみの旅立ちと思っているかもしれない。そして彼らはきっと悲しんでくれるだろう。
 だが、俺自身にとっては、これは争いに終始し、憎しみに覆われた時代の終わりであり、そしれこれをきっかけにして、争いではなく、話し合いによって物事を解決していく、区別はあっても差別のない、俺が手に掛けてしまった異母妹(いもうと)のユーフェミアや、実妹のナナリーが望んだ“優しい世界”の始まり。そう、始まりのための終わりだ。何を悲しむことがあるだろう。
 俺はゼロとして()って以来、父シャルルによって記憶を改竄されていた一年程を抜かせば、常に立ち止まることなく進んできた。その中で、多くの人を傷つけ、犠牲を出し、あまりにも多くの悲しみを生み出してきた。死ぬ必要のない少女も、俺のために死なせってしまった。
 ここで俺の命が終えても、俺が彼女と、いや、彼女たちと同じところへ行くことなどないだろう。それをするには、どのような理由であれ、俺は罪を犯し過ぎた。だから俺が行くのは、彼女たちがいるであろう天国ではなく、地獄。
 ただ、最期にただ一つの心残りは、最初から最期まで、俺のただ一人の共犯者であったC.C.との契約を、彼女との約束を果たしてやれないこと。彼女一人を遺していくこと。それだけはとても申し訳なく思う。せめてこれからの世界が、彼女にとっても笑顔を浮かべて過ごせる日になることを願ってやまない。
 そして改めて、目の前に広がる青空を見て思う。
 これは俺の旅立ち、罪人の俺にとっては不似合いな、あまりにも眩しいほどの、目に染みるほどの青空だ。
 だがこの空に俺は願う。これは俺にとっては悲しみの旅立ちではない。新しい世界への希望を託す旅立ちだ。だから俺の死を悲しんでもらう必要などない。そして、もう二度と逢うことのない愛する者たちに、そして見知らぬ人々も含めて、これからを生きる全ての者たちに願う。優しい世界を創りあげていってほしいと。この願いが、望みが、人々に伝わればいいと思う。それが俺の思いだなどと分かってもらわなくていい。そんな必要はない。だが、それが世界の望みだと、互いに互いの望みなのだと、願いなのだとそう思ってもらえればいい。だから悲しんでもらう必要などないのだ、全てを知っている彼らにも。
 青空を見ながらそう思い、この青さを最期に()に焼き付けて、俺は、逝く。

── The End




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