ラウンズとしてエリア11に戻って来たスザクは、アッシュフォード学園に復学した。
エリア11には総督補佐として先行してきたのだが、それにはもう一つ、ゼロことルルーシュの監視目的もあったからだ。
ルルーシュの監視は機密情報局── 機情── が直接その任務に当たっているが、スザクはそれだけでは安心出来なかった。自分の目で確かめるのが一番だと思ったのだ。その行為が、本来その役目を負っている機情の者たちからどのように受け止められているかも考えずに。
学園に復学した日、イベント好きの学園らしく、会長のミレイ主催によるスザク復学祝賀会が催された。
「でもすごい出世ね、ラウンズだなんて」
「ラウンズっていったら、皇帝直属で、国で一番の騎士だもんね」
「ルルーシュの奴がいなくなるから寂しくなると思ったけど、これで少しは気も紛れるな」
リヴァルの言葉にスザクは顔色を変えた。
「ルルーシュがいなくなる?」
そんなことは聞いていない。
「そうなの。ルルちゃん、EUに留学するの。それもあの歴史あるオックスフォードに」
答えたのはミレイだった、
「ほ、本当なのか、ルルーシュ?」
「ああ。理事長の推薦で、スキップして留学することになったんだ。とはいえ、俺一人で行ったらロロを残していかなきゃならないから、ロロも連れていくけどな」
「ロロは向こうのハイスクールに通うのよねー」
ミレイが言う。
「全く、少しは弟離れすればいいのに」
「ロロを一人になんて心配で出来ませんよ」
「ロロちゃんも迷惑よねー、こんな過保護な兄を持って」
ミレイがふざけたようにロロに尋ねる。
「そ、そんなことありません。僕は兄さんがいてくれたほうが……」
「ロロもロロでブラコンだからな」
そう言ってリヴァルが笑う。
「けどルルーシュ、EUにだなんて……」
スザクは心配そうなふりをして言葉に出す。
「オックスフォードは名門だからな。創立が古いだけじゃなく、各種の世界大学ランキングで常にトップレベルの大学として評価されてるし、勉強したけりゃ行って損はない。っていうより、チャンスがあったら是非行くべきだ」
ルルーシュは意気込みを込めて答えた。
「だけど……」
「だいたい、人に行けとは言われても行くなと言われるようなところじゃないだろ」
食い下がるスザクに不審げにルルーシュは答えた。
祝賀会が終わった後、スザクはロロを屋上に呼び出した。
「ルルーシュがオックスフォードに行くって、本決まりなのか?」
「ええ、そうですよ。だから僕も同行するんです」
「そんなことをしたらC.C.を捕まえられなくなる」
「その代わり、ゼロも現れませんよね」
「ロロ!」
「兄さんにとって、皇族の記憶がない以上、隠れてる必要なんてないんです。だから勉学で好きな道を選んで何が悪いんですか? 誰にも迷惑掛けるわけじゃなし、いいことじゃないですか」
ロロは一年間だけとはいえ、ルルーシュの弟役を演じて、本当にこの優秀な人が、いつまでも隠れていることはないと思っていた。偽りの存在ではあるが、弟としてのロロにとっては、ルルーシュは自慢の兄だ。
「貴方はここで総督補佐としての役目を果たしてください。兄さんの監視は僕がしますから、何も心配いりませんよ。
遅くなると兄さんが心配するから、失礼しますね」
「待て、話はまだ……」
「言っておきますけど、皇族じゃない兄さんにとっては、貴方はほんの暫くの間一緒に学園で過ごしただけの、唯の名誉ブリタニア人に過ぎないんですよ。そりゃ、今はラウンズに出世して凄いな、って言ってますけど。だから、あまり必要以上に構わないでくださいね。構い過ぎると、逆に不信がられますから。
じゃあ、本当にこれで失礼します」
言いたいことだけを言って、ロロは屋上を後にしてしまい、残されたスザクは途方に暮れた。何故機情は連絡を寄越さなかったのかと。
しかし学生が勉学に励み、その結果の留学に、職員として入り込んでいる者が口出し出来るわけもないのだ。
そして数日後、為す術もなく呆然と見送るスザクを後に、ルルーシュはロロと一緒にEUへと留学のために飛び立っていった。
それまでも両者間に戦いが全く無かったわけではないが、EUがブリタニアに対して、勢いを増し、かつ、優れた知略による綿密で高度な反抗を開始したのは、それから数ヵ月後のことである。
── The End
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