何故かゼロ・レイクエムが公のものとなり、ブリタニアの代表であったナナリーはゼロと共に姿を消し、超合集国連合も瓦解した。
世界は荒れている。
超合集国連合を創り上げ、対ブリタニアの一大組織を起ち上げたゼロことルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
しかし既に瓦解した黒の騎士団の元日本人幹部たちは、未だにルルーシュを裏切り者だと、自分たちを利用していただけのペテン師だと醜く罵り続けている。
フジ決戦後、アッシュフォード学園に復学したカレン・シュタットフェルトこと紅月カレンに対する視線も、当初の英雄を見るような、一種の憧れの視線から、侮蔑した冷淡なものへと変わっていた。
その視線の冷たさに耐えきれず、カレンは学園を去った。その事実に、学園にいた多くの者が安堵し、ほっとしていたことを、既に学園から去ったカレンは知る由もない。
政権に必死にしがみつこうとしていた合衆国日本の初代首相扇要は、与野党問わず、その責と無能さを叩かれて首相の座から引きずり降ろされ、その後も一国会議員として席を有してはいたが、選挙区区民のリコール運動が起きて議員の席すら失った。
扇が失ったのは政治的立場、信用だけではない。彼が“千草”と呼び続ける彼の妻であるヴィレッタ・ヌゥも、身重の出産間近の躰でありながら、扇の前から姿を消した。その行方は杳として知れない。
何もかも失った扇を、かつての黒の騎士団の仲間たちが慰めたが、扇にはそれすらやがて鬱陶しいものとなり、彼らとの接触も避けるようになった。扇の中には、彼らの存在が自分を首相の座から、国会議員の座から引きずり降ろしたのだとの身勝手な思いがあった。
それをいうなら、黒の騎士団の元日本人幹部たちとて、扇に対して言いたいことがある。 あの第2次トウキョウ決戦でのシュナイゼルたちとの会談の際、扇が途中から彼の妻となったヴィレッタと共に現れ、自分たちの疑問を呷るようなことをしなければ、自分たちがゼロを裏切り者と決めつけ、今、世間から爪弾きされるような事態には至っていないと。
互いに相手に対して不満や怒りを募らせ、自然、黒の騎士団の元幹部たちは互いに連絡を取り合うこともなくなり、疎遠になって、誰がどうなったのか、誰も分からなくなった。
ただ藤堂に関していえば、世界にゼロ・レクイエムと呼ばれるその計画が知れ渡った時、己の不見識さに、己がルルーシュに対して為したことに対して初めて後悔し、他の者たちが世間から隠れるようにひっそりと暮らしている中、警察に出頭した。かつてゼロを殺そうとした者の一人として。
その潔さに一部で賞賛が送られたが、それは本当に極一部のことであり、そもそも彼が犯したことが失われるわけではなく、世間の見守る中、裁判が開かれ、藤堂は終身刑となった。もし仮にあの場でゼロが確実に死んでいたならば、終身刑では済まなかっただろう。いや、それ以前に世界はそれこそどうなっていたかしれない。世界では流石にそこまでは知られていないが、シャルルの計画が完遂し、世界はその在り様を変えていたのだから。ちなみに、藤堂に最後まで同行して、四聖剣の中ではただ一人生き残った千葉もまた、藤堂同様に終身刑となった。
未だ、世界で己らのしたことの責任をきっちりと果たしたのは、藤堂と千葉のみである。
他の者は世間の闇の中に息を顰めている。己らの為したことに正面から向き合おうともせずに。そしてそれらがさらに彼らに対する悪評を増していくことになる。
ある日、EUの中の一国が出版している、とある若い女性向けの雑誌の数ページに渡って、一人の少年を中心にした写真が掲載された。写真の殆どはその少年がメインだったが、よくよく見れば、その写真の中にあまりにも有名な顔が一つあった。顔の半分を不思議な仮面で隠した一人の青年。写真の中、その青年は常に少年の傍らに控えていた。
その写真にピン! ときたのは一人や二人ではなかった。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは実は助かって生きているのではないか。何より写真の中にあるジェレミア・ゴットバルトの姿がその思いを肯定していた。
ジェレミアは最後まで皇帝ルルーシュの騎士だった。そしてゼロに刺されたルルーシュの遺体を持ち去ったのもジェレミアである。そうしてジェレミアに持ち去られたルルーシュの身体が、優れたブリタニアの医療により一命を取り留めていたとしても、決して有り得ない話ではない。
もしもルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが生きているならば、彼ならば、今の荒れた世界を立て直してくれるのではないのか。“賢帝”と呼ばれ、ナンバーズ制度を廃し、人の平等を唱えた彼ならば、超合集国連合を創り上げた彼ならば、今の状況からよりよい世界に導いてくれるのではないのか。
最初はネットを通して、そして次第にマスコミを動員して、世界の人々はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを捜し出すべく動き始めた。
そんなこととも知らず、当のルルーシュはいつもの如く、ジェレミアと咲世子、そして己の共犯者たるC.C.を伴い、C.C.の我儘を聞いてピザ屋に入った。
その店を大勢の人間が取り囲むまであと少し?
── The End
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